【掲載日:平成25年11月22日】
思はぬを 思ふと言はば 真鳥棲む 雲梯の社の 神し知らさむ
仲良し二人 ご機嫌頻り
交わす言葉に 軽口混じる
身代わり鏡 覗けば二人
嘘で好き言ん 当たるで罰が
近江の海 辺は人知る 沖つ波 君をおきては 知る人もなし
《近江海 岸辺は皆 知ってるが 沖波知るん あんたしか無い》
(うちのこと 上辺は皆 知ってるが 心知ってん あんたしか無い)【海に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇二七)
真澄鏡 見ませ我が背子 我が形見 持てらむ時に 逢はざらめやも
《身代わりに この真澄鏡 持ってたら あんた見たとき 逢えるで二人》【鏡に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・二九七八)
桃花染めの 浅らの衣 浅らかに 思ひて妹に 逢はむものかも
《桃染めの 色の様浅い 軽い気で お前に逢たり するもんかいな》【衣に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・二九七〇)
思はぬを 思ふと言はば 真鳥棲む 雲梯の社の 神し知らさむ
《嘘ついて 好きやてなんか 言うたなら 雲梯神さん 罰当てはるで》【鳥に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三一〇〇)
神さびて 巌に生ふる 松が根の 君が心は 忘れかねつも
《巌生える 松の根みたい 変わらへん あんたの気持ち うち忘れんで》【松に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇四七)
梓弓 末中ためて 淀めりし 君には逢ひぬ 嘆きはやめむ
《付き合いが 暫く間 淀んでた あんた逢えたで 嘆くん止める》【弓に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・二九八八)
末中ためて=弓の末と握りを張ったまま
=止めて→淀めりし=止まっていた)
十五日に 出でにし月の 高々に 君をいませて 何をか思はむ
《背伸びして 待ってたあんた 此処に居る 言うことないで 気ぃ満月や》【月に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇〇五)