【掲載日:平成25年11月19日】
紫草を 草と別く別く 伏す鹿の 野は異にして 心は同じ
二人気持ちが 通うて居れば
住むの別でも 心は一つ
決めたあんたと 紐結び合お
名前言わんで 死んだとしても
丹波道の 大江の山の さな葛 絶えむの心 我が思はなくに
《葛蔓 絶えんと伸びる 二人仲 絶えるやなんて 思いもせんで》【葛に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇七一)
紫草を 草と別く別く 伏す鹿の 野は異にして 心は同じ
《草別けて 寝る鹿違うが 別々に 住んで寝てるが 心一つや》【鹿に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇九九)
梓弓 引きみ緩へみ 思ひみて すでに心は 寄りにしものを
《色々と 思案考え した末に もううち心 あんたべったり》【弓に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・二九八六)
今さらに 何をか思はむ 梓弓 引きみ緩へみ 寄りにしものを
《もう何も 悩まんとくわ いろいろと 思たんやけど あんたに決めた》【弓に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・二九八九)
真玉つく 遠近兼ねて 結びつる 我が下紐の 解くる日あらめや
《今今後 誓こて結んだ 下紐が 解ける日ぃが 来ることないわ》【紐に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・二九七三)
(真玉つく=玉を通す紐=緒→お→おちこち)
みさご居る 荒磯に生ふる 名告藻の よし名は告らじ 親は知るとも
《あんたの名 うち絶対に 言わへんで 二人の仲を 親知ったかて》【藻に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇七七)
(名告藻=な告りそ=告げたらあかん)
わたつみの 沖に生ひたる 縄海苔の 名はかつて告らじ 恋ひは死ぬとも
《あんたの名 うち絶対に 言わへんで たとえ焦がれて 死んだとしても》【藻に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇八〇)
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