【掲載日:平成25年11月12日】
百に千に 人は言ふとも 月草の 移ろふ心 我れ持ためやも
恋の訴え 甘さが香る
わしを忘れな 仲絶やさんで
あんた分かるか この胸の内
気ぃ変わるやて そんなん無いわ
我妹子や 我を忘らすな 石上 袖布留川の 絶えむと思へや
《なぁお前 わし忘れなや わしかても 仲絶えるやて 思いもせんで》【川に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇一三)
(袖振る→布留)(布留川の水絶えん→絶えん)
赤駒の い行きはばかる 真葛原 何の伝て言 直にしよけむ
《もどかしいで 馬行き泥む 真葛原 人伝て違ごて 直言や良えに》【葛に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇六九)
何ゆゑか 思はずあらむ 紐の緒の 心に入りて 恋しきものを
《思わんと 居られへんがな うちの胸 取り込まれ仕舞て 恋しんやから》【紐の緒に寄せて】
― 作者未詳―(巻十二・二九七七)
(紐の緒=結ぶと食い込む→入りて)
石走る 垂水の水の 愛しきやし 君に恋ふらく 我が心から
《愛おしと あんた思う気 ほんまやで うちの本心 分かるなあんた》【滝に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇二五)
(垂水の水が走る→ハシきやし)
うちひさす 宮にはあれど 月草の 移ろふ心 我が思はなくに
《宮仕え してるんやけど 露草の 移ろう気持ち うち持たへんで》【草に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇五八)
(宮仕えの女は気が多い?)(露草=すぐに色褪せる)
百に千に 人は言ふとも 月草の 移ろふ心 我れ持ためやも
《なんやかや 噂立つけど 露草の 移り気心 持たんでうちは》【草に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇五九)
鴨すらも 己が妻どち 漁して 後るる間に 恋ふといふものを
《鴨でさえ 連れ同士餌を 漁るとき 一寸離れたら 恋しがる云で》【鳥に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇九一)