【掲載日:平成25年10月18日】
暁の 朝霧隠り かへらばに 何しか恋の 色に出でにける
恋焦れ出たなら 噂が立って
立った噂が この恋壊す
噂怖いが 我慢も辛い
堪え切れんで 顔出て仕舞う
紫の 我が下紐の 色に出でず 恋ひかも痩せむ 逢ふ縁をなみ
《顔色に 下紐みたい 出さんまま 焦がれ痩せるわ 逢う伝手無うて》【紐に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・二九七六)
(下紐=隠れて色がみえない→色に出でず)
隠り沼の 下ゆは恋ひむ 著く 人の知るべく 嘆きせめやも
《心奥 じっと我慢で 焦がれてよ 人知れる様な 嘆きはせんと》【沼に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇二一)
(隠り沼=水の流れない沼=下に隠る→下<心の中>)
行方無み 隠れる小沼の 下思ひに 我れぞ物思ふ このころの間
《心奥 じっと我慢で 遣り場ない 思いしてるで このごろずっと》【沼に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇二二)
隠り沼の 下ゆ恋ひあまり 白波の 著く出でぬ 人の知るべく
《心奥 じっとの我慢 為切れんで 顔出て仕舞た 人知れるほど》【沼に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇二三)
山川の 滝にまされる 恋すとぞ 人知りにける 間なくし思へば
《滝の様な 偉う激しい 恋やなと 間なし焦がれで 知られて仕舞た》【滝に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇一六)
暁の 朝霧隠り かへらばに 何しか恋の 色に出でにける
《朝霧の 隠り隠しに してたのに なんでこの恋 出て仕舞たやろ》【霧に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇三五)