【掲載日:平成25年10月1日】
妹が門 行き過ぎかねて 草結ぶ 風吹き解くな また還り見む
互い思えば 逢いたい見たい
一目だけでも 鎮まりするに
伝手を思案の 日数が過ぎる
命惜し無い 逢えんと死ぬで
玉蘰 懸けぬ時なく 恋ふれども 何しか妹に 逢ふ時も無き
《気に懸けん 時ないほどに 焦がれるに あの児逢う時 なんで無いんや》【蘰に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・二九九四)
(蘰を懸ける→心に懸ける)
あしひきの 山菅の根の ねもころに やまず思はば 妹に逢はむかも
《菅の根の 懇ろずっと 思てたら わしはあの児に 逢えるやろうか》【菅に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇五三)
殺目山 行きかふ道の 朝霞 ほのかにだにや 妹に逢はざらむ
《殺目山 往き来の道の 朝霧みたい ぼんやりでも良 あの児逢えんか》【霞に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇三七)
妹が門 行き過ぎかねて 草結ぶ 風吹き解くな また還り見む
《門の前 訪ね出来んで 結ぶ草 風解きなや また来るのんで》【草に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇五六)
(草を結んで 逢うこと祈る)
真澄鏡 直目に君を 見てばこそ 命に向ふ 我が恋やまめ
《真澄鏡 直にあんたを 見られたら 命懸け恋 鎮まるのんに》【鏡に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・二九七九)
(鏡を見る→直に見る)
我妹子に 衣春日の 宜寸川 縁もあらぬか 妹が目を見む
《あの児とで 衣貸し借り(交換) してみたい なんぞ逢う伝手 ないもんやろか》【川に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇一一)
(我妹子に衣貸す→春日)(宜寸川→縁も)
あしひきの 山菅の根の ねもころに 我が思ふ人を 見む縁もがも
《山菅の 根云う違うが 懇ろに うち思もとんや 逢う伝手欲しわ》【菅に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇五一 或る本)
君に逢はず 久しくなりぬ 玉の緒の 長き命の 惜しけくもなし
《長いこと あんた逢えんで うち死ぬわ 長ご思う命 惜しことないで》【玉に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇八二)