【掲載日:平成26年3月4日】
我妹子を 外のみや見む 越の海の 子難の海の 島ならなくに
旅出てみれば 誘惑多い
憂いの積もる 独り寝侘びし
軽い気持ちの 悪戯心
旅空恋に 落ちるは早い
在千潟 あり慰めて 行かめども 家なる妹い いふかしみせむ
《旅憂い 慰め合うて みたいけど 家であの児が 訝かしがるで》
―作者未詳―(巻十二・三一六一)
旅にありて 物をぞ思ふ 白波の 辺にも沖にも 寄るとはなしに
《岸と沖 どっち寄るんや 旅空で あの児口説こか 戸惑うとんや》
―作者未詳―(巻十二・三一五八)
我妹子を 外のみや見む 越の海の 子難の海の 島ならなくに
《越海の 子難の海の 島違うに 外からあの児 見んならんのか》
―作者未詳―(巻十二・三一六六)
(子難=児に逢い難い→外のみや見む)
志賀の海人の 磯に刈り干す 名告藻の 名は告りてしを 何か逢ひかたき
《磯に干す 名告藻違うが 言たあかん 名前言うたに なんで逢えんの》
―作者未詳―(巻十二・三一七七)
(名告藻=な告りそ=告げたらあかん)
波の間ゆ 雲居に見ゆる 粟島の 逢はぬものゆゑ 我に寄そる子ら
《雲の間に 見える粟島 逢てへん児 わしに気あるて 皆言いよんや》
―作者未詳―(巻十二・三一六七)
(粟島=あわん島→逢はぬ)
沖つ波 辺波の来寄る 左太の浦の この時過ぎて 後恋ひむかも
《沖岸の 波が満ち寄る 至福時 今過ぎたなら 焦がれんやろな》
―作者未詳―(巻十二・三一六〇)
衣手の 真若の浦の 真砂地 間なく時なし 我が恋ふらくは
《若浦の 真砂の土や 焦がれんは 間ぁ無しなんや ひっきり無しや》
―作者未詳―(巻十二・三一六八)
(真砂地=マナ→間なく)(真砂=マナゴ=愛児)
草枕 旅の悲しく あるなへに 妹を相見て 後恋ひむかも
《旅先で 心寂しい その上に あの児逢て仕舞て 焦がれも積もる》
―作者未詳―(巻十二・三一四一)
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