令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

金村・千年編(11)布留山(ふるやま)ゆ

2009年12月18日 | 金村・千年編
【掲載日:平成22年1月13日】

布留ふる山ゆ ただに見渡す みやこにそ
           ず恋ふる 遠くあらなくに



ここ 石上いそのかみ 布留ふる
天皇すめらみことの 武器庫のある 石上神宮いそのかみじんぐう
笠金村かさのかなむらは 連日 詰めていた

世に 一旦いったん緩急かんきゅうある時
ここを 攻め取られては 騒乱そうらんの輪が広がる
攻防 いずれの軍からも 守らねばならない
つとめが 長引けば 気はみ 心もえる

武人の  誉れ高い 金村にして 
さすがに  連日務めの 疲労は隠せない
家恋し  妻恋しの 思いが募る 

うつせみの 世の人なれば 大君おほきみの みことかしこみ 
磯城島しきしまやまとの国の 石上いそのかみ 布留ふるの里に 紐解ひもとかず 丸寝まるねをすれば
 
《人の世に 生まれたつとめ 果たすため 天皇おおきみさんの めい受けて
 大和の国の 布留の里 任務つとめ大事と ごろ寝する》
わがせる ころもれぬ 見るごとに 恋はまされど 
色にでば 人知りぬべみ 冬の夜の 明かしも得ぬを 
ずに われはそ恋ふる いも直香ただか

《着てる着物は よれよれや それ見るたんび 家恋し
 そぶり見せたら 他人ひとが知る なかなかけん 冬のよる
 まんじりせんと おまえをば 恋し思たら まぶたに浮かぶ》
                         ―笠金村歌中―〔巻九・一七八七〕 
布留ふる山ゆ ただに見渡す みやこにそ ず恋ふる 遠くあらなくに
《布留からは 遠くもないに 寝られんで 恋しい思う みやこのおまえ》
                         ―笠金村歌中―〔巻九・七一八八〕 
吾妹子わぎもこが ひてし紐を 解かめやも えば絶ゆとも ただふまでに
かへんぞ おまえ結んだ ひもやから 例え切れも 逢うまで解かん》
                         ―笠金村歌中―〔巻九・七一八九〕 

〔いかん いかん めいびての 夜明かし任務ぞ
 家のこと  妻のことなぞ 思うようでは
 この金村  まだまだじゃわい〕
〔ん? それも これも たわむれ歌を うとうて以来 千年ちとせ殿の習いが 思わず 身について仕舞うたか〕

〈題詞には  天平元年〔729〕冬十二月とあり 長屋王の変の後に当たるが 「みじかものがたり」としては 物語の展開 内容の適合性から 前年十二月頃の作とした〉 



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