令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

金村・千年編(5)三香(みか)の原

2010年01月06日 | 金村・千年編
【掲載日:平成21年12月22日】

三香みかの原 旅の宿りに 玉桙たまほこの 道の行きひに
               天雲あまくもの よそのみ見つつ・・・


風はまだ寒いが  心浮き立つ 春三月
お伴の 官人たちの声も はなやいでいる
神亀じんき二年〔725〕三香原みかのはらへの行幸みゆき
水清く 山青い 三香原みかのはら
都のたたずまいを整えし 平城ならみやこ
ここ 三香原みかのはらは なにか 心安らぐ離宮であった

「金村殿 久方ぶりの なごみの行幸ではないか
 みやこずれしない 純な娘子むすめの 歓待が 待っていて欲しいものじゃが」
同行の 車持千年くるまもちのちとせが 馬上から 声を掛ける
「そう  願いたいものじゃのう
 よしよし 願いを込めて 一首 うとうてみるか」

三香みかの原 旅の宿りに 玉桙たまほこの 道の行きひに 天雲あまくもの よそのみ見つつ 
言問こととはむ よしの無ければ こころのみ 咽せつつあるに
 
三香みかの旅 道で出逢うた 可愛かいらし 気にはなるけど
 声かけの 切っ掛けうて 胸詰まり くるし思いで いたけども》
天地あめつちの 神祇かみこと寄せて 敷拷しきたへの 衣手ころもでへて 自妻おのづまと 
たのめる今夜こよひ 秋の夜の 百夜ももよの長さ ありこせぬかも

《なんたる神の  引き合わせ 思いもかけず 話でき 一緒泊まれる この夜は
 〔春の短い 夜やけど〕  秋の夜長の 百倍の 夜の長さに 成って欲し》
                         ―笠金村―〔巻四・五四六〕 
天雲あまくもの よそに見しより 吾妹子わぎもこに 心も身さへ 寄りにしものを
《一目見て 惚れて仕舞しもうた あのむすめ 身ィも心も 取られてしもた》
                         ―笠金村―〔巻四・五四七〕 
今夜このよるの 早く明くれば すべをみ 秋の百夜ももよを 願ひつるかも
《このよるは 早よに明けたら あかんがな 秋の長夜の 百倍欲しい》
                         ―笠金村―〔巻四・五四八〕 

「これは  これは
 いい娘子むすめに 逢える気がしてきた」
「もし 出逢うたら 籤引くじびきにいたそう」

こまを並べる ふたり
背を  春の日が 暖かに包む



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