【掲載日:平成23年7月26日】
・・・春花の 繁き盛りに 秋の葉の 黄色の時に
あり通ひ 見つつ思はめ この布勢の海を
越への赴任以来
丸四年が経とうとしていた
守としての地方赴任 通常は四年
(鄙と思いし 越
居ついてみると 住めば都とか
ことに 暗く長い冬を過ごし
一度に花開く春の趣 他に代え難い
短い春は 瞬く間
いま 初夏を迎え 水辺が恋しい)
守家待の 呼びかけ
仲間内面々 布勢水海を目指す
思ふどち 大夫をのこの 木の暗の 繁き思ひを 見明らめ 心遣らむと 布勢の海に 小舟連並め 真櫂懸け い漕ぎ廻れば
《仕え仲間の 気の合う同士 溜まった鬱の 気晴らし仕様と 布勢の水海 小船を浮かべ 櫂取り揃え 漕ぎ巡りする》
乎布の浦に 霞たなびき 垂姫に 藤波咲きて 浜清く 白波騒き
《乎布の浦々 霞が靡き 垂姫崎に 藤波咲いて 浜は清うて 白波騒ぐ》
しくしくに 恋は益れど 今日のみに 飽き足らめやも かくしこそ いや毎年に
《楽し気分が 益々湧いて 今日の遊びで 満足出来ん こんな楽しみ 毎年仕様や》
春花の 繁き盛りに 秋の葉の 黄色の時に あり通ひ 見つつ思はめ この布勢の海を
《春の盛りの 花咲く時に 秋の季節の 黄葉の時に 通い続けて 見て愛でようや この良え景色 布勢水海を》
―大伴家持―(巻十九・四一八七)
藤波の 花の盛りに かくしこそ 浦漕ぎ廻つつ 年に偲はめ
《藤波の 花の盛りに また仕様や 浦々巡り 来る年々に》
―大伴家持―(巻十九・四一八八)
【四月六日】
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