【掲載日:平成23年4月29日】
・・・聞くごとに 心つごきて うち嘆き あはれの鳥と 言はぬ時なし
霍公鳥
夏の訪れ告げる 鳥
それは 家持 心ときめかせの鳥
池主の励ましに 力を得て 詠う
実に 一年八カ月ぶりに詠む 長歌
高御座 天の日嗣と 天皇の 神の命の 聞し食す 国のまほらに
山をしも さはに多みと 百鳥の 来居て鳴く声 春されば 聞の愛しも
《天治む 日の神継いだ 天皇の お治めなさる 良え国に
山仰山に あるのんで いろんな鳥が 可愛らしに 春になったら 来て鳴くよ》
いづれをか 別きて偲はむ 卯の花の 咲く月立てば めづらしく 鳴く霍公鳥
《特にどれとは 言わへんが 卯の花開く 月なると 良え声で鳴く ほととぎす》
菖蒲草 玉貫くまでに 昼暮らし 夜渡し聞けど
聞くごとに 心つごきて うち嘆き あはれの鳥と 言はぬ時なし
《菖蒲の草を 薬玉にする 五月来るまで 鳴き続け 昼は日中中 夜通しで
聞き続けても 胸躍り こころ満足 する鳥や 風心鳥やなと いっつも思う》
―大伴家持―〔巻十八・四〇八九〕
行方無く あり渡るとも 霍公鳥 鳴きし渡らば かくや偲はむ
《ほととぎす 浮き世の憂さに 暮らしても 鳴き飛ぶ声で 憂さ忘れるわ》
―大伴家持―〔巻十八・四〇九〇〕
卯の花の ともにし鳴けば 霍公鳥 いやめづらしも 名告り鳴くなへ
《卯の花の 咲く同時に鳴く ほととぎす ここぞの声に 心魅かれる》
―大伴家持―〔巻十八・四〇九一〕
霍公鳥 いとねたけくは 橘の 花散る時に 来鳴き響むる
《ほととぎす なんと小憎い 橘の 花散る好機に 声響かすん》
―大伴家持―〔巻十八・四〇九二〕
【五月十日】
霍公鳥の声に 心動かされた 家持
初夏の薫りに誘われ
渋谿 松田江 に 馬を遣らせて
英遠の浜辺にと立つ
城が崎の断崖が 海にせり出す この浜
東からの風 まともに受け 白浜伸びる
夏吹く 東風が 白波を 寄せている
家持の胸に 湧く歌心と同じに 次々と
英遠の浦に 寄する白波 いや増しに 立ち重き寄せ来 東風を疾みかも
《英遠浦に 寄せて来る白波 次々や 立って重なる 東風激しんや》
―大伴家持―〔巻十八・四〇九三〕
【五月十日】
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