【掲載日:平成23年8月2日】
・・・垂乳根の 御母の命 何しかも 時しはあらむを
真澄鏡 見れども飽かず 玉の緒の 惜しき盛りに・・・
転任の知らせ
待つ家待に 思わぬ知らせが届く
娘婿継縄母 身罷りの知らせ
かつて 仲麻呂二男 久須麻呂からの婚申し出
うまく 躱せたものの
何時何どきの 再度有るやも
これを避けつつ
藤原忌避との勘ぐり打ち消しのため
仲麻呂とは やや距離ある 藤原豊成が二男
藤原継縄との娘縁組
家持 必死の処世であった
天地の 初の時ゆ うつそみの 八十伴の男は 大君に まつろふものと 定まれる 官にしあれば 大君の 命畏み 鄙離る 国を治むと
《天と地が 出来た始めの 昔から 宮に仕える 人は皆 天皇に 従うと されて居るので 命受けて 遠いここ越 やってきた》
あしひきの 山川隔り 風雲に 言は通へど 直に逢はず 日の重なれば 思ひ恋ひ 息衝き居るに 玉桙の 道来る人の 伝言に 我れに語らく
《便り届くと 云うものの 山川隔て 遠い国 直に逢えんで 日ィ過ぎて どして居るかと 思う時 都から来た 人言うに》
愛しきよし 君はこのころ 心さびて 嘆かひ坐す 世間の 憂けく辛けく 咲く花も 時に移ろふ うつせみも 常無くありけり
《「今あの方は 心萎え 沈み返って 嘆き居る 世の中辛ろて 疎ましい 花も凋れる 世は無常》
垂乳根の 御母の命 何しかも 時しはあらむを 真澄鏡 見れども飽かず 玉の緒の 惜しき盛りに 立つ霧の 失せゆく如く 置く露の 消ぬるが如く 玉藻なす 靡き臥伏し 逝く水の 留みかねつと
《母上様に 何事や そんな年とは 違うのに 元気達者で 居られたに 霧や置く露 消える様に 靡く藻みたい 病床臥して 水逝くみたい 亡うなった」》
狂言か 人の言ひつる 逆言か 人の告げつる 梓弓 爪引く夜音の 遠音にも 聞けば悲しみ にはたづみ 流るる涙 留めかねつも
《嘘つきないな 騙しなや 遠い遥かな 知らせ聞き 悲しばかりで 嘆き居る 流れる涙 止まらへん》
―大伴家持―(巻十九・四二一四)
遠音にも 君が嘆くと 聞きつれば 哭のみし泣かゆ 相思ふ我れは
《便り来て あんた嘆くて 聞いたがな わしも悲して 涙に暮れる》
―大伴家持―(巻十九・四二一五)
世間の 常無きことは 知るらむを 心尽すな 大夫にして
《世の中の 無情知らんて こと無かろ そんな悩みな 男やないか》
―大伴家持―(巻十九・四二一六)
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