古今相聞往来（下）編（31）笠に縫ふといふ

【掲載日：平成25年12月27日】

人皆ひとみなの　笠に縫ぬふといふ　有間ありま菅すげ　ありて後のちにも　逢はむとぞ思ふ


優柔不断ゆうじゅうふだん　決めるの遅い
今日は止やめとこ　明日あしたに仕様しょうか
躊躇ためらう男　叱しかられするが
母性くすぐり　意外ともてる
　　
高湍たかせなる　能登瀬のとせの川の　後のちも逢はむ　妹には我れは　今にあらずとも
《能登瀬のとせ川がわ　先流れてく　今や無のて　後あとでも良ええか　あの児に逢あうん》【川に寄せて】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―作者未詳―（巻十二・三〇一八）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（能登＝ノト→ノチ＝後）
　　
高麗剣こまつるぎ　我が心から　外よそのみに　見つつや君を　恋ひ渡りなむ
《気後きおくれの　心邪魔じゃまして　外よそながら　そっと眺ながめて　恋してるねん》【大刀に寄せて】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―作者未詳―（巻十二・二九八三）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（剣の柄頭の輪→我）
　　
洗あらひ衣きぬ　取替川とりかひがはの　川かは淀よどの　淀まむ心　思ひかねつも
《取替とりかえの　川の淀みか　来くるのんの　躊躇ためらい心ごころ　信じられんわ》【川に寄せて】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―作者未詳―（巻十二・三〇一九）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（衣を洗って取替える→取替川）
　　
はねず色の　移ろひやすき　心あれば　年をぞ来き経ふる　言ことは絶えずて
《心決ぎめ　ちゃんとよう為せん　男やで　便たより来るけど　日ィ余計よけ掛かる》【花に寄せて】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―作者未詳―（巻十二・三〇七四）

我慢辛抱しんぼの　末すえ来たならば
きっと叶かなうで　うちらの思い
それ　まで生きて　待とうや二人
それ　がほんまの　恋やと思う

人皆ひとみなの　笠に縫ぬふといふ　有間ありま菅すげ　ありて後のちにも　逢はむとぞ思ふ
《笠に縫ぬう　有馬の菅すげや　生き続け　後々のちのちきっと　逢あお思てんや》【菅に寄せて】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―作者未詳―（巻十二・三〇六四）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（有馬菅→ありて＝生きて）
　　
木綿畳ゆふだたみ　田上山たなかみやまの　さな葛かづら　ありさりてしも　今ならずとも
《さな葛かずら　蔓つる長なご伸びる　長なご生きて　今や無のうても　結ばれしたい》【葛に寄せて】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―作者未詳―（巻十二・三〇七〇）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（畳→タナカミ）
　　
木綿ゆふ包づつみ　白月山しらつきやまの　さな葛かづら　後のちもかならず　逢はむとぞ思ふ
《伸びた蔓つる　先の方ほでまた　出会う様よに　後々のちのちうちら　結ばれするで》【葛に寄せて】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―作者未詳―（巻十二・三〇七三）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（木綿包み＝白い→白月山）