【掲載日:平成25年12月17日】
斑鳩の 因可の池の よろしくも 君を言はねば 思ひぞ我がする
誓た心を 疑いせんが
ふとしたことに 不安が過ぎる
他の皆は 良う言わへんが
一人信じる あの人やから
大海の 底を深めて 結びてし 妹が心は うたがひもなし
《心中 深う確かめ 誓こたんや わしは一寸も 疑ごてへんで》【海に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇二八)
月夜よみ 門に出で立ち 足占して 行く時さへや 妹に逢はずあらむ
《月好うて 門の占い 良え卦出て 気ぃ良行くのに 逢えんの違うか》【月に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇〇六)
斑鳩の 因可の池の よろしくも 君を言はねば 思ひぞ我がする
《良え人と 皆言わへん そんなこと うち信じへん けど心配や》【池に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇二〇)
(因可→よろしく)
心許して 名前を言たが
それきりなんて そんなんあるか
冷たい仕打ち 恨みはしても
もしや来ぬかの 切無い思い
解き衣の 思ひ乱れて 恋ふれども 何のゆゑぞと 問ふ人もなし
《解き衣 みたい心乱れて 焦がれても どないしたかと 誰も聞かんで》【衣に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・二九六九)
(解き衣=解いた衣=ばらばらになる→乱れて)
住吉の 敷津の浦の 名告藻の 名は告りてしを 逢はなくも怪し
《名告藻の 言うたあかん名 言うたのに 逢うてくれんて どういうこっちゃ》【藻に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇七六)
(名告藻=な告りそ=告げたらあかん)
杜若 佐紀沢に生ふる 菅の根の 絶ゆとや君が 見えぬこのころ
《菅の根も 絶える云うけど 仲絶やそ 言うんかあんた この頃来んが》【菅に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇五二)
(杜若→咲く→佐紀)
橡の 袷の衣 裏にせば 我れ強ひめやも 君が来まさぬ
《袷衣 裏返す様に 用なしか 無理来い言わん どうせ来んのや》【衣に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・二九六五)
朝な朝な 草の上白く 置く露の 消なばともにと 言ひし君はも
《朝毎に 草置く露や 消えんなら 一緒消えよと あの人言たに》【露霜に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇四一)