【掲載日:平成25年6月18日】
我が背子が 来むと語りし 夜は過ぎぬ しゑやさらさら しこり来めやも
二人共寝る夜の 眠りは深い
あっと云う間の 夜明けが悔し
独り寝る夜は 眠りが浅い
まだか夜明けは 早よ早よ明けよ
白栲の 手本ゆたけく 人の寝る 味寝は寝ずや 恋ひ渡りなむ
《寛いで 互い手枕 共寝る様な 眠り出けんで 恋続けとる》
―作者未詳―(巻十二・二九六三)
玉釧 まき寝る妹も あらばこそ 夜の長けくも 嬉しくあるべき
《一緒共寝る 児でも居ったら この長い 夜も嬉しに 過ごせるんやに》
―作者未詳―(巻十二・二八六五)
白栲の 袖離れて寝る ぬばたまの 今夜は早も 明けば明けなむ
《あの児袖 枕にせんと 寝る夜は 明けるもんなら 早よ明けて仕舞え》
―作者未詳―(巻十二・二九六二)
我が背子が 来むと語りし 夜は過ぎぬ しゑやさらさら しこり来めやも
《ええいもう あんた来る言た 夜ぉ明ける 今更来んわ 間違たかって》
―作者未詳―(巻十二・二八七〇)
逞し男 恋には弱い
なんでこのわし 女々しに焦がる
正気分別 どこやら忘れ
あの児逢わんと 夜も日も明けん
天地に 少し至らぬ 大夫と 思ひし我れや 雄心もなき
《天と地に 次ぐ男やと 思てたに なんやこのわし 女々しいこっちゃ》
―作者未詳―(巻十二・二八七五)
ますらをの 聡き心も 今は無し 恋の奴に 我れは死ぬべし
《男らし 分別心 失のうて 恋の奴に 殺され相やで》
―作者未詳―(巻十二・二九〇七)
うつせみの 現し心も 我れは無し 妹を相見ずて 年の経ゆけば
《もうわしは 正気心も 消失たで おまえ逢えんで 日ィ経つよって》
―作者未詳―(巻十二・二九六〇)