【掲載日:平成25年6月11日】
人言の 讒しを聞きて 玉桙の 道にも逢はじと 言へりし我妹
立った噂は 広がり早い
あっと云う間の 一月三月
静まり待つが 酷なるばかり
逢えん二人は 恋焦れに嘆く
人言は まこと言痛く なりぬとも そこに障らむ 我れにあらなくに
《噂なぞ なんぼ酷うに なったかて 気に病むわしや 無い思てたに》
―作者未詳―(巻十二・二八八六)
人言を 繁みと妹に 逢はずして 心のうちに 恋ふるこのころ
《人噂 五月蝿てあの児 逢わへんで 心堪えて 焦がれとんのや》
―作者未詳―(巻十二・二九四四)
人言を 繁み言痛み 我妹子に 去にし月より いまだ逢はぬかも
《人皆の 噂酷うて あの児には 先月こっち まだ逢てないで》
―作者未詳―(巻十二・二八九五)
逢はなくも 憂しと思へば いや増しに 人言繁く 聞こえ来るかも
《逢われんの 辛い悔しと 思てるに 噂益々 酷なってきた》
―作者未詳―(巻十二・二八七二)
人言の 讒しを聞きて 玉桙の 道にも逢はじと 言へりし我妹
《他人の言う 中傷真に受け わしの児が 道で逢うんも 嫌やて言うた》
―作者未詳―(巻十二・二八七一)
み空行く 名の惜しけくも 我れは無し 逢はぬ日数多く 年の経ぬれば
《噂立ち 逢えん日多て 年過ぎた もっと噂し もう良でわしは》
―作者未詳―(巻十二・二八七九)
(み空行く名=どんどん広がる噂)
人言を 繁み言痛み 我が背子を 目には見れども 逢ふ縁もなし
《人噂 多て五月蝿て あの人を 目にはするけど 逢う伝手ないわ》
―作者未詳―(巻十二・二九三八)
ただ今日も 君には逢はめど 人言を 繁み逢はずて 恋ひ渡るかも
《今日あんた 逢いと思たに 人噂 五月蝿て逢えん 焦がれてんのに》
―作者未詳―(巻十二・二九二三)