【掲載日:平成24年3月20日】
剣大刀 諸刃の利きに 足踏みて 死なば死なむよ 君に依りては
日毎生活に 欠かせぬ道具
弓太刀持つは 男の役目
鏡に櫛は 女の命
衣紐の緒 男女の契り
梓弓 引きて許さず あらませば かかる恋には 逢はざらましを
《しっかりと 心引き締め しとったら こんな苦しい 恋為なんだに》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二五〇五)
剣大刀 諸刃の利きに 足踏みて 死なば死なむよ 君に依りては
《太刀の刃を 足で踏み貫き 死ぬんなら 死んでも良えで あんた為なら》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四九八)
我妹子に 恋ひし渡れば 剣大刀 名の惜しけくも 思ひかねつも
《お前ちゃん 恋し続けて 居れるなら 名前評判 何にも要らん》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四九九)
(剣大刀→刃を「ナ」と言った→名)
里遠み 恋ひうらぶれぬ 真澄鏡 床の辺去らず 夢に見えこそ
《離れ住み 恋萎えてるで この床に 何時も現れ 夢出て来てや》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二五〇一)
真澄鏡 手に取り持ちて 朝な朝な 見れども君は 飽くこともなし
《毎朝に 澄んだ鏡を 見るみたい あんた素敵や 何ぼ見てても》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二五〇二)
朝月の 日向黄柳櫛 古りぬれど 何しか君が 見れど飽かざらむ
《黄柳の櫛 古うなったが あんたはん どうしてどして 良え男やで》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二五〇〇)
夕されば 床の辺去らぬ 黄柳枕 何しか汝れは 主待ちがてに
《床取れば いつも傍ある 黄柳枕 お前も主 焦がれ待つんか》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二五〇三)
人の見る 上は結びて 人の見ぬ 下紐開けて 恋ふる日ぞ多き
《目に触れる 上着の紐は 結ぶけど 下紐解き 待つ日が多いで》
―柿本人麻呂歌集―(巻十二・二八五一)
人言の 繁き時には 我妹子し 衣なりせば 下に着ましを
《他人噂 喧し時は お前ちゃん 衣やと良えな 下隠して着るに》
―柿本人麻呂歌集―(巻十二・二八五二)
真玉つく 遠をし兼ねて 思へこそ 一重の衣 一人着て寝れ
《その内に 二人の良え日 来る思て 今辛抱して 独り寝てるで》
―柿本人麻呂歌集―(巻十二・二八五三)
(真玉つく=玉に付ける緒→を)
白栲の 我が紐の緒の 絶えぬ間に 恋結びせむ 逢はむ日までに
《下着紐 切れて仕舞う前 逢える様に 呪い結び してその日待と》
―柿本人麻呂歌集―(巻十二・二八五四)
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