【掲載日:平成24年3月9日】
見渡しの 三室の山の 巌菅 ねもころ我れは 片思ぞする
根深小菅は 隠した思い
静か深うに 堪えてる心
野原出たなら 根を張る草を
縛り標結う 結ばれ願ごて
港に さ根延ふ小菅 ぬすまはず 君に恋ひつつ ありかてぬかも
《下根這う 小菅みたいに 忍べんで 焦がれ恋して じっと出来んわ》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四七〇)
山背の 泉の小菅 なみなみに 妹が心を 我が思はなくに
《吹く風に 泉の小菅 靡き寄る 並々違うで お前思うん》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四七一)
見渡しの 三室の山の 巌菅 ねもころ我れは 片思ぞする
《岩菅の 根ぇしっかりや うち思い しっかりやけど 片恋なんや》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四七二)
(菅→菅の根→ねもころ)
菅の根の ねもころ君が 結びてし 我が紐の緒を 解く人はあらじ
《心込め あんた結んだ この紐を よもや解く人 居るもんかいな》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四七三)
山菅の 乱れ恋のみ 為しめつつ 逢はぬ妹かも 年は経につつ
《恋心 乱れ焦らして その挙句 逢うてくれんで もう何年や》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四七四)
あしひきの 名負ふ山菅 押し伏せて 君し結ばば 逢はずあらめやも
《山菅を 押し伏せる様に しっかりと 誓いするなら 逢うても良えで》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四七七)
山川の 水陰に生ふる 山菅の 止まずも妹は 思ほゆるかも
《山川の 水陰生える 山菅の 止むことないで お前思うん》
―柿本人麻呂歌集―(巻十二・二八六二)
浅葉野に 立ち神さぶる 菅の根の ねもころ誰がゆゑ 我が恋ひなくに
《浅葉野の 古びた菅根 胸深こう あんた違たら うち恋せんわ》
―柿本人麻呂歌集―(巻十二・二八六三)
さね葛 後も逢はむと 夢のみに 祈誓ひわたりて 年は経につつ
《そのうちに 逢いたいもんと 夢中で 祈り続けて もう何年や》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四七九)
浅茅原 小野に標結ふ 空言を いかなりと言ひて 君をし待たむ
《荒れた野に 標結う嘘を ひょっとして 思てこのうち 待ってんのんや》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四六六)
(小野=荒れ野=大切でない→標を結う事がない→嘘)
大野らに たどきも知らず 標結ひて ありかつましじ 我が恋ふらくは
《闇雲に 誰構わんと 共寝た児やに 恋し恋しで どう仕様もないで》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四八一)
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