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令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

家待・青春編(二)(13)道の芝草

2010年10月26日 | 家待・青春編(二)内舎人青雲
【掲載日:平成22年10月19日】

立ちかはり  古き都と なりぬれば
             道の芝草 長くひにけり



元明げんめい天皇 明日香を離れ とうの都に 負けじと造る
平城ならの都は 咲く花匂う 永遠とわの都と 思いしものを
乱が呼んだか 都の移り 政略ゆえか 帝気まぐれか

やすみしし わご大君おほきみの 高敷かす 日本やまとの国は 
皇祖すめろきの 神の御代みよより 敷きませる 国にしあれば
 
天皇おおきみの 治めなされる 大和国やまとくに ご先祖せんぞかみの 御代みよからも ずっと治めて 来た国や》 
れまさむ 御子みこぎ あめした 知らしまさむと 
八百万やほよろづ 千年ちとせをかねて 定めけむ 平城なら京師みやこ
 
《お生まれなさる 御子おこさんが 次々天下てんか 支配され
 八百年も 千年も 続くにした 平城ならみやは》 
かぎろひの 春にしなれば 春日山かすがやま 三笠の野辺のへに 
桜花 くれごもり かほとりは なくしば鳴く
 
《春になったら 春日山かすがやま 三笠の野辺のべ
 桜花 そこの木陰こかげで 郭公かっこどり 休むことう 鳴き続け》
つゆしもの 秋さり来れば 駒山こまやま 飛火とぶひたけに 
はぎを しがらみ散らし さ男鹿をしかは 妻呼びとよ
 
《秋が来たなら 生駒山 飛火とぶひの丘に
 萩枝を からみ散らして 牡鹿おすしかが 連れ呼ぶ声を 響かせる》 
山見れば 山も見がし 里見れば 里も住みよし 
もののふの 八十やそともの うちへて 思へりしくは 
天地あめつちの ひのきはみ 万代よろづよに 栄え行かむと 
思へりし 大宮すらを たのめりし 奈良の都を
 
《山を見たなら え眺め 里見てみたら 住みうて
 つかえる人は 誰もかも 天と地ぃとが 一緒なり 
 くっ付く日まで 栄えると 思うておった 大宮や 心たよりの 奈良みやや》 
新世あらたよの 事にしあれば 大君おほきみの ひきのまにまに 
春花の うつろひかはり むらとりの 朝立ちゆけば 
さす竹の 大宮人おほみやびとの ならし 通ひし道は 
も行かず 人もかねば 荒れにけるかも

《そやのに時代 打ち変わり 天皇おおきみさんの お指図さしず
 花散るみたい みや移り 鳥飛ぶように 人影かげ消えて
 仕えてた人 とおってた 道には馬も 通らんで 人も行かんで 荒れてしもてる》
                         ―田辺福麻呂歌集たなべのさきまろがかしゅう―〈巻六・一〇四七〉

立ちかはり  古き都と なりぬれば 道の芝草 長くひにけり
《世の中が 変わり古都ふるみや なって仕舞て 道の雑草 えらい伸びとる》
                         ―田辺福麻呂歌集たなべのさきまろがかしゅう―〈巻六・一〇四八〉
なつきにし  奈良の都の 荒れゆけば 出で立つごとに 嘆きしまさる
《親しんだ 奈良の都が 荒れてくで ここ来るたんび 嘆きが募る》
                         ―田辺福麻呂歌集たなべのさきまろがかしゅう―〈巻六・一〇四九〉