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令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

家待・青春編(二)(18)咲ける秋萩

2010年10月08日 | 家待・青春編(二)内舎人青雲
【掲載日:平成22年11月5日】

秋の野に 咲ける秋萩
         秋風に なびけるうへに 秋の露置けり



新京しんきょうでの 独り暮らし
旧都となった 平城ならなつかしい

大嬢おおいらつめとのふみり取り 
それでも いやしきれないうつごころ
ふと 見つけし 紀郎女きのいらつめ 
もどし策との 相聞送付
奇遇出合いの 宮中振られの娘子おとめ
千載せんざい一遇いちぐう 今ぞの誘い

ことごとくに 敗れ去り
家持は  天平十五年〈743〉の 秋を迎えていた
〈友は  男が良い 女は もうこりごり〉
同じ内舎人うちとねり 石川広成いしかわのひろなり
権勢とは縁遠い  立ち居振る舞い
父を  故文武天皇とし 
聖武帝の兄に当たるとうも
当人は  首を振る

家人いえひとに 恋過ぎめやも かはづ鳴く 泉の里に 年の経ぬれば
《泉川 蛙鳴く里 なごて 家にる人 恋しいこっちゃ》
                         ―石川広成いしかわのひろなり―〈巻四・六九六〉

そんな  広成に 家持は 親近感を覚えていた
今日も 独り身のすさびに 創りし歌を 広成へ

秋の野に 咲ける秋萩 秋風に なびけるうへに 秋の露置けり
《秋の野に 咲くあきはぎは 秋風に 靡く花先 秋露つゆ置いとおる》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〈巻八・一五九七〉
男鹿をしかの 朝立つ野辺の 秋萩に 珠と見るまで 置ける白露しらつゆ
男鹿おすしかの 朝立つ野原 咲く秋萩はぎに 白露置いて まるでたまやで》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〈巻八・一五九八〉
さ男鹿の 胸別むなわけにかも 秋萩の 散り過ぎにける さかりかもぬる
男鹿おすしかが 分け通ったで 散ったんか 秋萩はなの盛りが 過ぎたんやろか》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〈巻八・一五九九〉

広成からは なぞらえた返しが来る

妻恋ひに 鹿鳴く山辺の 秋萩は 露霜つゆしも寒み さかり過ぎ行く
《連れ求め 鹿しか鳴く山の 秋萩は 露霜さむて 盛り終わるで》
                         ―石川広成いしかわのひろなり―〈巻八・一六〇〇〉
めづらしき 君が家なる はなすすき 穂に出づる秋の 過ぐらく惜しも
風情ふぜいある あんたの家の 薄花すすきばな 穂ぉ出る秋が 仕舞う惜しい》
                         ―石川広成いしかわのひろなり―〈巻八・一六〇一〉

広成の歌を得て家持 独りをかこってうた

山彦やまびこの 相とよむまで 妻恋ひに 鹿鳴く山辺やまへに 独りのみして
《山彦が こだまするまで 連れ呼んで 鹿しか鳴く山に わし独りやで》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〈巻八・一六〇二〉
この頃の 朝明あさけに聞けば あしひきの 山呼びとよめ さ男鹿鳴くも
《今頃の 夜明け男鹿おじかの 声聞くと 山ひびかして 鳴いとおるがな》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〈巻八・一六〇三〉