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令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

家持・青春編(一)(8)色に出でにけり

2010年08月06日 | 家持・青春編(一)恋の遍歴
【掲載日:平成22年6月25日】

託馬野つくまのに ふる紫草むらさき きぬ
             いまだ着ずして 色にでにけり



ついに 
家持  安らぎの恋を得た
探しに探し  待ちに待った
理想の相手 
笠郎女かさのいらつめ
容貌かんばせは 十人並みだが
かしこく抑えた 利発さ 
教養備えた 歌み才気
一緒して 気疲きづかれが無い
まさに  波長が合うとは このこと

水鳥の 鴨の羽色はいろの 春山の おほつかなくも 思ほゆるかも
《春の山 ぼっと霞んで 見えんに あんたの気持ち よう分からへん》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―〈巻八・一四五一〉

朝ごとに 我が見る屋戸やどの 瞿麦なでしこの 花にも君は ありこせぬかも
《毎朝に 見る撫子なでしこの 花みたい あんた毎日 見たいて思う》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―〈巻八・一六一六〉

ぎりの おほに相見し 人ゆゑに 命死ぬべく 恋ひわたるかも
《霧みたい かおおぼろしか 見てへんに なんでこんなに 恋しいのやろ》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―〈巻四・五九九〉

皆人みなひとを よとの鐘は 打つなれど 君をしへば ねかてぬかも
みんなみな 早よと鐘は 鳴るけども あんた思たら 寝られへんがな》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―〈巻四・六〇七〉

託馬野つくまのに ふる紫草むらさき きぬめ いまだ着ずして 色にでにけり
託馬野つくまのに えてる紫草くさで 染めた服 着てもせんのに 見られてしもた
〈あんたとは こころを染めた だけやのに 逢わへんうちに 知られてしもた〉》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―〈巻三・三九五〉

陸奥みちのくの 真野まの草原かやはら 遠けども 面影おもかげにして 見ゆといふものを
《あんたには しばらうて ないけども 面影浮かび うち、、見えてるで》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―〈巻三・三九六〉

奥山おくやまの 岩本いはもとすげを ふかめて 結びし心 忘れかねつも
《忘れへん あんなふこうに ちこたんや あんたの心 うち、、忘れへん》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―〈巻三・三九七〉

我が形見かたみ 見つつしのはせ あらたまの 年の長く 我れもおもはむ
《思ててや  うちの身代わり 見てながら うちもずうっと 思てるさかい》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―〈巻四・五八七〉

家持は 満ち足りたかよいに いそしんでいた