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令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

家持・青春編(一)(5)名の惜しけくも

2010年08月17日 | 家持・青春編(一)恋の遍歴
【掲載日:平成22年6月15日】

剣太刀つるぎたち 名のしけくも 我れはなし
             君に逢はずて 年のぬれば



「おお 旅人たびと殿の若い時に 生き写し
 よくぞ このばばを 訪ねてこられた」
相好そうこうを崩す 丹生女王にうのおおきみ
旅人若年の 相聞そうもん相手
「なになに 女王ひめぎみに類する 乙女おとめじゃと
 これは  これは 血は争えぬ
 口添えを  せぬではないが
 合う合わぬは  お互いしだい
 誘いに乗せるは  腕しだい
 よいかな  家持殿
 首尾の責めは  負わぬぞよ」

坂上郎女いらつめの とがめ立てに反発
しからば 美味びみなる身分の御方おかたと よしみを通じ
鼻明かそうとの  魂胆

おもふと 人に見えじと なまじひに 常に思へり ありぞかねつる
《物思い 知られんとこと 無理をして 思い悩むん ほんまにつらい》
                         ―山口女王やまぐちのおおきみ―〈巻四・六一三〉

葦辺あしへより 満ちしほの いや増しに 思へか君が 忘れかねつる
《潮ちる みたいに慕情おもい こみあげて あんたのことが 忘られへんよ》
                         ―山口女王やまぐちのおおきみ―〈巻四・六一七〉

秋萩に 置きたる露の 風吹きて 落つる涙は とどめかねつも
《風吹いて 萩の玉露 散るみたい うちの涙は められへんわ》
                         ―山口女王やまぐちのおおきみ―〈巻八・一六一七〉

あひおもはぬ 人をやもとな 白栲しろたへの 袖つまでに ねのみし泣くも
《片思い  分かってんのに 思い詰め 袖びしょ濡れに なるまで泣くよ》
                         ―山口女王やまぐちのおおきみ―〈巻四・六一四〉

我が背子せこは あひはずとも 敷栲しきたへの 君が枕は いめに見えこそ
《あんたはん  思ててくれん 思うけど せめて夢でも 出てくれへんか》
                         ―山口女王やまぐちのおおきみ―〈巻四・六一五〉

剣太刀つるぎたち 名のしけくも 我れはなし 君に逢はずて 年のぬれば
《うちなんか なに言われても もうえわ 逢えん日なごう 続いたよって》
                         ―山口女王やまぐちのおおきみ―〈巻四・六一六〉

〈いやはや  高貴なお方は 育ちが良すぎる
 変に  なよなよばかりか すぐに涙じゃ〉
 
恋の狩人  家持
渉猟しょうりょうの旅は 続く