豆豆先生の研究室

ぼくの気ままなnostalgic journeyです。

ぼくの探偵小説遍歴・その4

2024年02月18日 | 本と雑誌
 
 ぼくの探偵小説遍歴、第4回

 ★「メグレ警部」(河出書房)
 ジョルジュ・シムノン「メグレ警部」シリーズは、第1期の24巻は全巻そろえて読んだが、飽きが来て36作までは数冊だけ、それ以降は1冊も買ってない。最終的には全50巻出たらしい。企画した長島良三さんには敬意を表するが、ぼくにはそこまでの「メグレ」愛はなかった。河出版シリーズの表紙の挿絵は、ぼくが学生時代に聞いた「NHKフランス語講座」テキストの挿絵を描いていた水野良太郎で、懐かしかった。シトロエン2CVも何回も登場した(下の写真)。
          

 「メグレ警部」もののうち、「男の首」「怪盗レトン」「サン・フォリアン寺院の首吊人」などは角川文庫版で、「オランダの犯罪」「サン・フィアクル殺人事件」(創元推理文庫)などの品切れ本も古本屋で買い集めた。「黄色い犬」「港の酒場で」など旺文社文庫や、「メグレ罠を張る」「メグレと老婦人」などハヤカワミステリ文庫からも、メグレものが何冊か出ていた(上の写真)。「罠を張る」巻末の日影丈吉の解説によると、シムノンは1945年から55年の間はカリフォルニアで暮らしており、同地で多くのメグレものを書いたという。パリの空気感が濃厚な小説なだけに意外である。

              
 長島良三訳「メグレ警視」(集英社文庫・世界の名探偵コレクション10、1997年)には本邦初訳の短編が数本収められているほか、長島訳「メグレ警視のクリスマス」(講談社文庫、1978年)には「メグレのパイプ」なども収録されている。長島著「メグレ警視」(読売新聞社、1978年)や、長島編「名探偵読本2・メグレ警視」(パシフィカ、1978年)という解説ムック本も買った。後者にはシムノンのメグレ警部もの全編(確か102作)の刊行年と邦訳の題名が掲載されていて、役に立った。上の写真は、G・Simenon“La pipe de Maigret”(Press de la Cite版、1957年)の表紙>
 ブリューノ・クレメールがメグレを演ずるテレビドラマの「メグレ警部」はよかったし、ジャン・ギャバンのメグレもよかったが、ローワン・アトキンソン(豆豆先生!)が演じるメグレは「?」だった。何でイギリス人の俳優(コメディアン)がフランス人警官役を演じたのか。 

 ★「刑事コロンボ」(二見書房)
 「刑事コロンボ」は、NHKで放映されたテレビドラマが面白かった。コロンボ役のピーター・フォークも好きな役者だった。彼が出演した「グレート・レース」はお洒落な映画だった。主題歌 “Sweet Heart Tree” もいい曲だった(ヘンリー・マンシーニだったか?)。ただし彼の声はダミ声で、小池朝雄の吹替えのほうがよい。
 テレビがヒットしたので、ノベライズ小説も発売された。「刑事コロンボ 二枚のドガの絵」、「別れのワイン」(?)(二見書房)を買った。「二枚のドガの絵」は内容は忘れてしまったが、題名だけは印象に残っている。逆に「別れのワイン」のほうは題名は不確かだが、内容は覚えている。犯人のソムリエがワインセラーのエアコンを一時的に切ったことが決定的な証拠なのだが、自慢家の犯人(ソムリエ)はワインセラーの中のワインを一口飲んで、顔をゆがめて「このワインは温度調整ができていない」とケチをつけたことで、自白に追い込まれるという話だった。
 飽きっぽいぼくは、小説化されたコロンボはこの2冊で飽きてしまった。テレビ番組の方はかなり長い間せっせと見たが、やがて新鮮味はなくなり、コロンボの犯人への詰めより方がまどろっこしい上に嫌味に思えてきた。最近でもミステリー・チャンネルで数十話一挙放送されたりするが、まったく見ることはない。   

 ★犯罪実話小説
 コリン・ウィルソン「殺人百科」(弥生書房)をきっかけに、「スクールガール殺人事件」(新潮社、1975年)など、彼の殺人ものにはまった時期があった。シカゴ大学ロースクールの学生が少年を殺した事件も本書に入っているが、ヒチコックがその事件を映画化した「ロープ」も面白かった。クラレンス・ダロウ「アメリカは有罪だ―ーアメリカの暗黒と格闘した弁護士ダロウの生涯(上・下)」(サイマル出版会、1973年)には、実際の「ロープ」事件で被告のシカゴ大生の弁護人を務めたダロウの回顧談も入っている。
 ジェロルド・フランク「絞殺--ボストンを襲った狂気」(ハヤカワ文庫、1979年)は、当時アメリカで起きた連続殺人事件に取材したノンフィクション。T・カポーティ「冷血」(新潮社)と並ぶ殺人事件ドキュメント小説の嚆矢といえる。青木雨彦「ノンフィクションの楽しみ」は、「絞殺」は私にとってもはや「古典」であると書いている(「ハヤカワ文庫への招待」1979年12月、29頁)。

   
 ★現代教養文庫(社会思想社)
 牧逸馬「浴槽の花嫁」(現代教養文庫、1975年)の牧逸馬シリーズなどをきっかけに(上の写真)、この世界には「リッパロロジスト」なる「切り裂きジャック」の研究者!が存在することを知り、その手の人たちの本も読んだ。
 仁賀克雄「ロンドンの恐怖ーー切り裂きジャックとその時代」(ハヤカワ文庫、1988年)、島田荘司「切り裂きジャック・100年の孤独」(集英社文庫、1991年)、E・B・ハナ「ホワイトチャペルの恐怖--シャーロック・ホームズ最大の事件(上・下)」(扶桑社ミステリー、1996年)、そして、コリン・ウィルソン(仁賀克雄訳)「切り裂きジャック--世紀末殺人鬼は誰だったのか?」(徳間文庫、1998年)などである(下の写真)。
    
 コリン・ウィルソンに挟んであった新聞記事によると、犯行現場に残されていたDNA鑑定の結果、切り裂きジャックの正体はポーランドからの移民「アーロン・コスミンスキ」だと判明したとするラッセル・エドワード氏の新著が刊行されるという(毎日新聞2014年9月8日夕刊)。ぼくは買わなかったが、S・ハリソン構成「切り裂きジャックの日記」(同胞舎)と、B・ベイリー「切り裂きジャックの真相」(原書房)という本の新聞広告の切り抜きも挟まれていた。

 この手の本の遍歴が1990年代末で終わっているところを見ると、1960年代末に軽井沢旧道(本通り)沿いの三笠書房で初めて犯罪実話雑誌を立ち読みした時の恐怖(怖いもの見たさ)から始まったぼくの犯罪小説への関心は20世紀の終焉とともに下火になっていったようだ。
 現実に起きた犯罪を取り上げたドキュメントにまさるスリリングなフィクション小説に出会うことはなかったし、これからもないと思う。 (つづく)

 2024年2月18日 記
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