ぼくは今、次のクルマを何にするかで迷っている。
60歳を過ぎたボクにとって、おそらく次のクルマは最後のクルマになるだろう。そう思うと、何を基準に、何を選ぶか、迷うのである。
★スバルいう選択
わが家のマイカーの歴史から行くと、スバルで終わるというのが一つの選択である。
わが家のマイカーの歴史は“スバル360”に始まる。
昭和36年(1961年)のことだった。母親が中古のスバル360を5万円で買ってきて、そのクルマで練習をして、小金井(府中)で一発で軽免許を取った。
白かアイボリーのボディーに濃いブラウンか黒のルーフだった。
1、2年後に、同じ“スバル360”の新車に買い替えた。今度のはブルーのボディに白のルーフだった。
写真が残ってないので、似たようなブルーのミニカーで代用しておく。
さらに数年して、今度は出たばかりの“スバル1000”に買い替えた。
360から1000に乗りかえたとき、その室内の広さに驚いたことは何度も書いた。家族4人にはあの広さで十分という今日に至るまでのボクの信念の原点である。
その後、スバル1100ff-1にも乗った。
軽井沢、千ヶ滝にあった西武百貨店軽井沢店前の写真と、旧軽井沢の町営駐車場(今の竹風堂の裏手にあった)の写真。
わが家のスバルの最後は“スバル レオーネ”だった。ワインレッドの派手なボディーだった。
しかし、現行のスバル車で魅力のあるクルマはない。強いて候補を揚げるならインプレッサあたりなのだろうが、“スバル1000”の初心を忘れ、節度感なく肥大化したあのクルマには乗りたくない。
スバルは2、3代前のレガシーあたりまでは、全幅を1720mmに収めるなど、コンパクトであることに頑張っていたと思うのだが。最近のスバルは「コンパクト」であることに価値を見出していないらしい。
ぼくは上に書いたように、「スバル1000の衝撃!」から抜け出せないでいる。抜け出さない覚悟でいる。4人家族にとってスバル1000以上の大きさは全く必要ない。
わが家の庭先にガレージを掘るときも、職人さんから「代金はたいして違わないのだから5メートル掘っておけ」とアドバイスされたのだが、「ポリシーとして4メートル50以上のクルマに乗るつもりはないから」と断って4m50cmにした(家の前は2メートル余地があるので、ランクスの出入りにはこれで十分である)。
残念ながら、最初のクルマがスバルだったから最後もスバル、ということにはならなさそうである。
トヨタと共同開発という、スバルBRZというのもちょっと気になるが、幅が1800mm前後らしいのでパスせざるを得ない。
★トヨタ アクア(AQUA)という選択
やがて、なぜかわが家のマイカーはトヨタ・カローラに代わる。たしか、スバル・レオーネが大きくなりすぎたせいだったように思う。当時の(5、6代目?)カローラのサイズがわが家のガレージにジャストサイズだったのだろう。
カローラのセダンを1、2度買い替えて、それ以降はハッチバックのカローラ・ランクスになる。これも初代の写真がないので、ミニカーで代用しておく。
この間一度だけ、フォルクスワーゲンのPOLOに浮気をしたことがあるが、当たった車が悪くて2年弱で、ランクスに戻った。
写真は、追分、借宿の浅間台の十字路で浅間山を背景に撮った、ポロの後ろ姿。シャガール・ブルーというきれいなソリッドカラーだった。
そして、7年前、柴咲コウの“青のランクスで~ ♪”というCMソングが流れていた頃に買った“カローラ・ランクス”に今も乗っている。
とくに不満はないので、買い替えたいという欲求が生じない。9月に3回目の車検を通したばかりで、「絶対あっちのほうがいい」というクルマには現在のところ出会わない。
写真は、軽井沢、千ヶ滝の国土計画事務所前で。国土の社名は変更になったが、わが家では今でも「コクド」である。
この流れで行くと、次もトヨタという選択が考えられる。
近所のカローラ店のお兄さんは、プリウスを熱心に売りに来た。試乗もした。しかし買う気はまったくない。プリウスは積極的に嫌いなクルマである。
これまた「節度感なき肥大化」が嫌いである。加えて「2400cc並みのパワー」という「プラス100の余裕」以来変わらないトヨタの売り方(そんなコピーにつられて買う方が悪いかも)、フットブレーキ、妙な(ホルスタインの乳首式)シフトノブ。あんなものを操作して切り返しをするのはまっぴらである。
ところが、12月に発売になる「第3のプリウス」、アクアは迷う。
先日行きつけのカローラ店で、「部外秘」のカタログを見せてもらったが、今月発売の『月刊自家用車』2011年12月号に、そのカタログがスクープされている。ホンダ、インサイト・エクスクルーシブなどをけん制するトヨタのリークだろう。これを公開して先行予約を取ろうという魂胆が見え見えである。
“アクア”のサイズは、3995×1695×1445、フロアシフトでサイド(ハンド)ブレーキで、ぼくの基準にドンピシャである。
問題はスタイルだが、評判の悪い3代目ヴィッツに似ていたら即却下だったのだが、幸いヴィッツを踏襲しなかった(当然だが)。
しかし、「これだ!」というほどの形でもない。ある部分はプリウス風、サイドのエッジはデミオみたい、リアコンビランプはノートみたい、リアスポイラーとリアバンパーはランクス風(!)・・・といった感じで、なんか統一感がないのである。
候補には残しておくが、エコカー減税が終わって売れ行きが落ち始めた頃に、値引きを提案して来るだろうから(プリウスの時もそうだった)、その時に考えればいいだろう。
★ホンダ インサイト・エクスクルーシブ(CR-Z)という選択
ところで、わが家では一度も選ばれたことのないホンダ車だが、実はぼくのクルマとの出会いはホンダに始まる。
ぼくが生まれて初めて「欲しい!」と思ったクルマは、“ホンダS500”だった。発売に先立って、このクルマの価格を当てるクイズが行われた。新聞に全面広告が載って、50万円前後というヒントも付いていた。本当の価格は45.9万円だったらしい。
僕も応募したが当然外れた。応募総数は573万通を超えたという(『絶版車アルバム 1950-1969』コスミック出版、61頁)。
しかも、ぼくが買った最初の「クルマ」も、実はホンダ車であった。
残念ながら四輪車ではないが、ホンダのスーパーカブである。これで1969年夏の軽井沢を駆けめぐったのだった。
さらにその1、2年後には、大学の同級生の親父さんの“ホンダN360”を借りて、友人と3人で軽井沢にドライブ旅行に出かけた。
あの小さなN360に3人乗りだったが、「狭かった」という記憶がまったくない。狭いかどうかは、物理的な空間の広狭によってきまるものではないのだろう。
そう言えば、“ホンダ・ビート”を欲しかった時期もあった。
でも、すでに世帯をもっており、子どももいたので、実際に買ったのは“スバル レックス・コンビ”だった。
・・・こんなことを考えると、「最後のクルマこそホンダ車を!」という選択もあるかもしれない。先日公開された“インサイト・エクスクルーシブ”は、発売前のコンセプトカーにかなり近い質感になった。全長がもう少し短ければよりいいのだが。
CR-Zも捨てがたい。年寄りの乗り降りには厳しいし、ごく稀に4人で乗ることもありうるので躊躇はあるが。
サイズで行けば、“フィット・ハイブリッド”もあり得る。ただし、青山のショールームで、何度もCR-Zとエクスクルーシブを乗り比べたあとで、フィットの運転席に座ってみると、妙に高い着座位置に違和感を覚えた。
さらに、ホンダは、来年か再来年には“ホンダ ビート”の1000cc版を出すという話も聞く。これも見てみたい。
★ マツダ・デミオ、スズキ・スイフトという選択
その他では、マツダの“デミオ・スカイアクティブ”も捨てがたい。
節度感をもって「コンパクトカー」としてのパッケージングに努力しているのがいい。
そして、最近気になっているのが、スズキの“スイフト”(SWIFT)である。
『コンパクトカーのすべて 2011-2012』(モーターファン別冊)では、スイフト(とスプラッシュ)は玄人の圧倒的評価を受けているし(18~20頁)、JAFの機関誌『JAF Mate』2011年7月号の自動車アセスメントでは、全体として極めて高い評価を得ている。
スズキ・スイフト VW・ポロ
前面衝突 運転席側 ☆☆☆☆☆☆ 6 ☆☆☆☆☆☆ 6+
助手席側 ☆☆☆☆☆☆ 6 ☆☆☆☆☆☆ 6+
後席保護 レベル3 レベル4 (5点満点)
後面衝突 運転席側 11.03 7.65 (12点満点)
助手席側 11.03 7.65 (12点満点)
歩行者頭部保護 レベル4 レベル2 (5段階評価)
ブレーキ性能 乾いた路面 43.9m 39.5m
湿った路面 46.6m 40.8m
後方衝突時の安全性は試験車両中トップの成績である。
フォルクスワーゲンを敵に回して奮闘しているわが国産車メーカーに頑張ってほしい、と切に願う。「中小企業魂」の結実といわれる“スイフト”も、そう思って眺めるといとおしさすら感じる。
現在のような経済状況の中で、国産車を買うことは国民の道徳的義務だとぼくは思うのだが。
* 最初の写真は、『月刊自家用車』2011年12月号の表紙を飾るトヨタ・アクア。
2011/11/3 記