8月20日(水) 東京に帰る日。東京はまだかなり暑そうで気が重いが、用事もあるので仕方ない。
朝食前に片づけを済ませて家を出発し、途中発地市場に寄って野菜を買う。
上の写真は発地市場から眺めたきょうの浅間山。毎夏ここから眺めた浅間山がその年の浅間山の見納めになることが多くなった。下の写真は、それを zoom したもの。例のハート形のがけ崩れ跡は写っているのか・・・。
9時半過ぎに発地を出発。碓氷軽井沢インターから上信自動車道に入り藤岡から関越道に乗る。

上里サービスエリアで小休憩し、孫の好物の「峠の力餅」を買う。
むかしは信越線の熊ノ平駅で売っていたものだが、近年は横川や上里のSAで売っている。上里ではプラスチック容器に入った6個入りしか売ってなかった。雰囲気はないが仕方ない。
12時少し過ぎにわが家に到着。暑さは覚悟していたので、それほど気にはならない(負け惜しみ)。
おまけに前日の8月19日に写したツルヤ駐車場からの浅間山も添えておく。

この夏の軽井沢の収穫の1つは、失くしたと思っていた本に出会えたこと。
Thomas Hardy の “The Mayor of Casterbridge” (Collins English Library,1979)である(下の写真)。
何だ、ただの rewrite 本かと思われるかもしれないが、この本の前の所有者は磯野富士子先生なのである。先生が亡くなられた後に、先生の蔵書の一部を先生にゆかりのある家族法研究者に頒布することがあった。遅れて知ったぼくは残っていた本の中から、この本1冊だけを記念に頂戴した。先生のお手元にどのような経緯でこのような rewrite 版が残っていたのかは分からないが、ぼくにとって思い出の1冊である。

ぼくは行方昭夫「英文快読術」(岩波現代文庫)の助言に従って、一時期この手の rewrite 版を多読したことがあった。Hardy もよく読んだ著者の一人で、“The Mayor of Casterbridge” (「キャスターブリッジの町長」)は確か Oxford UP の Bookworms シリーズで読んだ。ところがその本は香港の Oxford 出版局から出ているもので、挿し絵の人物がどれも中国人風の容貌になっていて、原作の雰囲気が感じられなかった。今回探したが、今度は Oxford の香港版が見つからなくなってしまった(このコラムの2025年5月18日「トマス・ハーディ「テス」ほか」に Oxford 香港版の町長のイラスト入りの表紙写真が挿入してある)。
ところが、磯野先生の旧蔵書は、BBC か何かの実写版 “The Mayor of Casterbridge” の一場面が表紙になっていて、本文中にも10頁おきくらいで挿絵が挿入されていた。本文中の挿絵では主人公の町長はいかにも気性の激しい19世紀イギリスの農夫といった感じに描かれていたが、表紙の主人公の町長を演じる役者は意外にも飄々とした雰囲気ではないか。この男はたしか妻を競売にかけて売ってしまったはずだが・・・。赤子を抱いた妻のほうが毅然とした表情である。
磯野先生の記念の本を捨てたはずはないと信じていたが、しっかりと軽井沢に置いてあったのだ。今回は東京に持ち帰ることにした。
8月20日は祖父の命日でもある。もう没後40年以上が経過したが、今でもあの日の記憶は鮮明である。1984年8月20日の夕暮れ時に東武東上線の車窓から見た赤紫色の夕陽に染まった雲が忘れられない。極楽浄土はというのは西方の、あの夕日の向こうにあるのだろうと思った。
2025年8月25日 記