豆豆先生の研究室

ぼくの気ままなnostalgic journeyです。

モーム 「凧・冬の船旅」

2014年01月23日 | サマセット・モーム
 昨日の朝、注文してあったサマセット・モーム「凧・冬の船旅」(英宝社)が届いた。国立市の古本屋からで、700円だった。

 英宝社の“英米名作ライブラリー”シリーズではなく、“サマセット・モーム傑作選”の第3巻だった。中野好夫・小川和夫訳。
 奥付けに、昭和28年9月10日増刷(昭和26年8月30日初版)とある。ちなみに定価180円、地方定価190円。あの頃は「地方定価」というのがあった。

 この巻にも、口絵にモームの写真が載っている(上の写真)。

                      

 今回もかなり傷んだ本だったが、まえの「サナトリウム・五十女」に比べればかなり程度は良い。昭和26年と28年の差とも思えないが・・・。
 カバーを取ると、本体の表紙は、昭和のあの頃のフランス装というのだろうか、さっぱりした生成(オフ・ホワイト)である。こういう装丁も悪くない(下の写真)。
 中学時代に使っていた旺文社の“バラ・シリーズ”という参考書も、表紙カバーを取ってみると、こんな装丁だった。

       

  きのうの通勤の電車内で「エピソード」を読んだ。「サナトリウム・五十女」に入っている「ロマンチックな令嬢」と同工異曲、男の恋が冷めるまでの話。「サナトリウム・五十女」収録の「思いがけぬ出来事」と「グラスゴウ生れの男」とは正反対の事態展開である。
 ぼくは男の「恋」は、「グラスゴウ生れの男」や「思いがけぬ出来事」のジャックのようであってほしいと思うが、モームはそうは言わないだろう。

 いずれも、モーム・ファンでなければ、読んでもそれほど面白いとは思わないだろう。だけど、僕にとっては久しぶりのモームで、しかも前々から気になっていた“Creatures of Circumstannce”をようやく全編読み終えることができたので、それなりに満足している。

 それにしても、“Creatures of Circumstannce”(「環境の生き物」)だけがなぜ新潮社版(さらにその後1990年代に出たちくま文庫版)に収録されなかったのか。
 今回入手した「凧・冬の船旅」の巻末には、英宝社の“サマセット・モーム傑作選”の既刊目録が載っているのだが、それによると、第1巻「手紙・奥地駐在所」、第2巻「東洋航路・環境の力」、第3巻本書、第4巻「大佐の奥方・母親」、第5巻「サナトリウム・五十女」のラインナップすべてが「英宝社版権所有」となっている。
 第1、2巻は田中西二郎訳で新潮社版全集にも新潮文庫にも収録され、中野=小川訳も「カジュアリーナ・トリー」としてちくま文庫版に入っている。ちくま文庫版は後書きに「英宝社から刊行された」と書いてある。なのに、何ゆえに「環境の生き物」だけはこのようなことになっているのだろうか・・・。

 2014/1/23 記

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モーム 「昔も今も」

2014年01月20日 | サマセット・モーム
 
 下の写真の人物、誰だか分りますか?
 サマセット・モームだそうです。モームもこんな小林旭みたいなポーズをとる(とらされる)ことがあったとは・・・。
     

 中野好夫・小川和夫訳『サナトリゥム・五十女』(英宝社・モーム傑作選・5)の口絵に載っていた。
 背表紙がいまにも剥がれそうなので、スキャナーの蓋を閉めないままでスキャンした。
 ひどく汚れた本だったが、昭和26年7月1日発行なので仕方ない。何と言ったって60年以上前の本である。カバー付きで残っていたほうが奇跡かもしれない。
 ぼくがまだ1歳だった頃、誰かがこの本を読んで受験勉強をしていたのかと思えば、我慢もできよう。最初の所有者はまだご存命なのだろうか。どのような経路をたどって名古屋の“シマウマ書店”なる古本屋にたどり着いたのだろう。
 
 新刊書がまだ売れ残っているのを発見した『大佐の奥方・母親』(英宝社・英米名作ライブラリー、1986年、第16刷)を買いに行ったついでに、『昔も今も』(ちくま文庫)も買ってしまった。
 訳者の後書きを読むと、この新訳本もずいぶん数奇な運命をたどって出版にこぎつけたようだ。記念に表紙をアップしておく。
 他のちくま文庫版モーム・シリーズと違って和田誠のイラストではないけれど・・・(冒頭の写真)。

 もう一つ、ついでに研究室の書棚を片づけていたら、朱牟田夏雄編『サマセット・モーム』(研究社出版、1966年)が出てきたので、これもアップしておく。
 行方昭夫氏が朱牟田先生と一緒に書誌情報などを執筆している。

      

 きょうの授業で2013年度の講義がすべて終わった。
 あとは期末試験の監督、採点、そして入試が終わると卒業式になる。

 2014/1/20 記

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モーム 「大佐の奥方・母親」

2014年01月20日 | サマセット・モーム
 * 前の書き込みが長すぎたので(文章が長いというよりは、本の表紙の写真が縦長なので)、2つに分割した。

 さて、「サナトリウム・五十女」「凧・冬の船旅」の古本は、ともに1000円以内、「大佐の奥方 母親」に至っては、吉祥寺のジュンク堂書店で、新刊書として売られていることがネット検索で判明した。
 さっそく吉祥寺まで出かけて購入した。当時の値段のままだったが、ただし消費税が3%から5%に上がっていた。
 通勤電車の中で「体面」と「母親」を読んだ。同じスペイン物だが、戦前に書かれた「母親」よりは、1940年代になって書かれた「体面」のほうが僕には面白かった。

 全体を通して読んで感じたことは、これらの作品は(当然ながら)一つのまとまった短編集でとして読まれるべきだということである。
 いずれの短編も、主人公はまさに「環境の生き物」なのである。ある者はスペインという風土が生んだ人物であり、ある者は南太平洋という風土が生んだ人物という違いはあるが、結局はすべて「環境の生き物」なのである。
 しかも、ほとんどの短編の真の主人公は、語り手の男性や、主人公であるかのように描かれている男性ではなく、その背後にいる一見すると影が薄いように見える女性である。
 モームは、女性のことを「環境の生き物」と表現したのかもしれない。

 この連作ともいえる作品群の中からいくつかをピックアップして、面白いものだけを『短編集』にしてしまっていいのだろうか、という疑問が湧いた。
 確かにそれほど面白くない作品もあるのだが、やはり一まとまりの作品群とし読んだほうが(つまらない作品も含めて)ぼくには面白かった。

 ところで、なぜ『環境の生き物』は新潮社版の全集に収められず、新潮文庫にも収録されなかったのだろうか。
 今回入手した英宝社『英米名作ライブラリー』版の扉裏には「日本語版版権英宝社所有」とある。当時モームは受験英語の世界のドル箱の一人だった。ひょっとしたら、訳者の中野好夫が英宝社に配慮し、それで新潮社の「全集版」にも収録されなかったのだろうか。
 モームは長生きしたけれど、そろそろ著作権も切れる頃ではないだろうか。どこかの文庫本に入ることを期待したい。もちろん英宝社が再版してくれればいいのだけれど。 

 2014/1/17記 (2014/1/21追記)


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モーム 「サナトリウム・五十女」

2014年01月19日 | サマセット・モーム
                  ▲ 「サナトリウム・五十女」の裏表紙

 わがブログ“豆豆先生の研究室”のコラムのうち、閲覧された頻度のベスト10というのを無料で見ることができる。
 先日それを見たら、サマセット・モーム関連のページがベスト10入りしていた。モームのカテゴリーは、今からちょうど4年前(!)、2010年1月17日の書き込みが最後だったにもかかわらず、誰かが覗いてくれたらしい。
 モームの『指針』という翻訳本の悪口が書いてあった。

 ずいぶん長いこと放ったらかしていたものである。モームへの関心の衰えが原因だろう。
 この間、岩波文庫から『アシェンデン』『夫が多すぎて』『人間の絆』『お菓子とビール』『サミング・アップ』などが次々に刊行され、ちくま文庫からも『昔も今も』が出ているけれど、いずれもすでに読んだものばかりだったので(『夫が多すぎて』は読んでない。)、食指が動かなかった。

 モームのベスト10入りをきっかけに、Googleでモーム関連のページをあれこれ検索しているうちに、以前からずっと気になっていたことが再燃してしまった。

 それは、短編集“Creatures of Circumstannce”(1947年。『環境の生き物』)の翻訳本をもっていないことである。そのため、収録された短編を一つのまとまりとして読んだことがない。
 一部は、以前まだ売られていた英宝社の『英和対訳モーム短編集』(中野好夫、小川和夫、瀬尾裕訳)や、岩波文庫の『モーム短編集(下)』(行方昭夫訳)などで読むことができたが、残ったものが気になっていた。
 
 どうやら英宝社の「モーム傑作選」、「英和対訳シリーズ」などを経て、最後は1990年代に同社の「英米名作ライブラリー」というシリーズから、「サナトリウム・五十女」「凧・冬の船旅」「大佐の奥方・母親」の3分冊で出ていたらしい。しかし、その後は版元品切れになってしまった。

 調べると、“Creatures of Circumstannce”は「英米名作ライブラリー」では以下のような構成になっている。
                  
「サナトリウム・五十女」 英宝社・英米名作ライブラリー(1956年)
  1 Appearance and Reality 仮象と真実 1934
  2 A Woman of Fifty 五十女 1946 
  3 A Casual Affair 思いがけぬ出来事 1934
  4 The Romantic Young Lady ロマンチックな令嬢 1947
  5 A Man from Glasgow グラスゴウ生れの男 
  6 The Sanatorium サナトリウム 1938  

                          

「凧・冬の船旅」 英宝社・英米名作ライブラリー(1955年)
  7 The Kite 凧  
  8 Episode エピソード 1947
  9 Unconquered 征服されざる者 1943
  10 Winter Cruise 冬の船旅 1943 

「大佐の奥方・母親」 英宝社・英米名作ライブラリー(1955年)
  11 The Colonel's Lady 大佐の奥方 1946 
  12 Flotsam and Jetsam 根なし草
  13 The Happy Couple 幸福な夫婦 1908 
  14 The Point of Honour 体面 1947 
  15 The Mother (La Cachirra) 母親 1909

 いずれも、Amazonに出品されているのがすぐ見つかったが、2500円とか4800円とか結構な値段が付けられていた。そこまでの大枚(?)を叩いてまで欲しいわけではない。
 あれこれ探しまわって、ようやくリーズナブルな値段で3冊ともそろえることができた。
 「サナトリウム・五十女」は「日本の古本屋」の中の古書店で、「凧 冬の船旅」は「スーパー源氏」の中の古本屋で見つけて、さっそく注文した。
 値段はいずれも1000円以内だった。

 2014/1/17 記
 

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豆豆研究室の新年

2014年01月12日 | あれこれ

 年明けから2週間近くになるが、遅ればせながら“豆豆研究室”の窓から眺めた正月の東京の風景を2枚ばかり…。
 代わり映えもしないのだけれど、いつの間にか風景が変わってしまう、昨今の東京だけに、毎年写しておけば、その変化の一端を伺うことができるかもしれない。

 げんに、東京医科歯科大学や順天堂病院のビルは数年前はまだ建設中だった。
 その医科歯科大学や明治大学のビルの向こうに、わずかに見えている東京スカイツリーだって、2、3年前まではなかった。
 東京スカイツリーを望むことができるというのは、わが“豆豆研究室”の自慢の一つでもある。恐らくぼくは生涯あの建物に登ることはないだろうけれど。
  
         

 最後は、交換教授の韓国の先生と一緒に出かけた源来酒家で出された杏仁豆腐。
 正月や卒業式には“龍”や“寿”、“祝・卒業”などの文字を入れてくれる。

         

 2014/1/12 記

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2014年の仕事始め

2014年01月06日 | あれこれ

 きょう、2014年1月6日(月曜日)から、2014年の仕事始め。

 後期の授業があと2週間残っていて、それが終わると期末試験。そして入学試験が続き、合格発表が終わると、ほどなく卒業式となる。

 月曜の講義は2時間目からなので、ゆっくりいつもの風景を撮影しながらの出勤。
 恒例の飯田橋界隈の門松を撮影して歩いた。

 まずは、ホテル・メトロポリタン・エドモントの正門の門松。
 歩道に近すぎて、角度をつけないと2つが収まらない。

           

 つづいて、飯田橋アイガーデン・エアー通り(?)沿いの、日建設計の門松。
 同社が設計した東京スカイツリーがガラスに飾ってある。
 ▲ 一番最初の写真が、日建設計の門松。

          
 その次は、かつては“エディーズ・カフェ”という喫茶店が入っていたビルの門松。
 “エディーズ・カフェ”は閉店してしまったが、毎年正月の門松だけは飾られている。
 まん中のガラス戸に写っているのが自分らしい。

           

 最後の門松は少し歩いた西神田交差点手前のビルに飾られた門松。
 “日本弘道会ビル”という表札(?)が掲げてある。

           

 きょうの通勤途上で見かけた門松は以上の4本だった。
 
 最後に、いつもながらの“ホッペマ通り”の遠近法をアップしておく。九段側から眺めたもの。

           

 2014/1/6 記

 

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軽井沢の新年(2014年1月2日)

2014年01月02日 | 軽井沢・千ヶ滝
 
 毎年恒例の書き込みを忘れていた。

 “新年の軽井沢”。
 軽井沢に行ったわけではないが、毎年、年末年始の軽井沢の風景を、長野県道路事務所のホームページに載っている長倉(南軽井沢交差点を西に左折したあたり。上の写真)と、鳥井原(ツルヤの交差点。下の写真)の自動カメラの映像から転載してきた。

 今年は元旦にこの作業を忘れてしまったので、遅ればせながら1月2日午前11時12分の映像をアップした。
 鳥井原は晴れているが、長倉の道路脇には雪が積もっている。
 長倉の気象情報は、「路面状態 湿潤、連続雨量 0mm、気温 1.2℃、積雪深 0cm、路面温度 -0.4℃とある。

                 

 今年はいつ頃、軽井沢に行けるだろうか。
 夏休みには、久しぶりに単独執筆の単行本の締め切りが控えてる。高校時代に読んだ培風館の「英文法精義」のように、まえがきに「軽井沢の山荘にて」と記すことができるだろうか。

 今年の勉強初めには、二宮周平「家族法(第4版)」と、三谷博「愛国・革命・民主」を読んでいる。

 2012/1/2 記

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