大相撲は大の里の横綱昇進で沸いているようだ。しかしぼくは先場所限りでNHKテレビの大相撲中継を見ることをやめた。
ぼくの子どもの頃は、場所が始まると夕方はNHKだけでなく民放各局も一斉に大相撲中継をやっていた。栃錦、若乃花、朝潮が横綱で、大関が松登、大内山、三根山、北葉山、関脇・小結が北の洋、安念山、信夫山、鶴ケ嶺などなど(彼らが同時期にこの地位だったかは覚えていない)、幕尻に小城の花と金の花が並んでいた番付を見た記憶がある。ご贔屓は松登と房錦だった。
その後は野球に夢中になり、相撲には興味がなくなってしまった。数十年を経て、ふたたび大相撲を見るようになったのは2020年の初場所からである。ぼくは2019年の大みそかに路上で転倒して右ひざの膝蓋骨を骨折してしまい、正月早々から近所の病院に入院して手術を受けることになった。その病院生活の退屈をしのぐために、何十年振りかで毎日夕方になるとNHKテレビの大相撲中継を見るようになったのである。
その頃大関だった朝乃山がご贔屓力士になった。逞しそうな体格と、「気は優しくて力持ち」といった表情をしていて、いかにも「おすもうさん」といった雰囲気をたたえた力士だった。仕切り、立ち合いもきれい、技巧派で取り口もうまかった。勝っても負けても表情を変えず淡々として土俵を務めている姿が見ていて気持ちがよかった。やがて鶴竜のようなタイプの横綱になるだろうと期待していた。
ところが、コロナ禍の折に協会の自粛令に違反して親方(朝潮)と一緒に風俗店かどこかに出かけたとして 6場所の出場停止を食らってしまった。いくら協会の自粛違反とはいえ、犯罪行為ではない。6場所の出場停止はあまりにも厳しいと思った。日本全体がコロナ自粛の集団ヒステリー状態にあった時期の出来事であった。
その後、ある力士が後輩の未成年力士に酒を飲ませた事件が週刊誌で報じられたが、その力士は親方ともども厳重注意処分しか受けなかったという。未成年者に酒を飲ませる行為が厳重注意処分で済まされてしまうことに比べて、業界内の内規違反にすぎない朝乃山が 6場所出場停止というのはあまりにも重すぎて不公平であるとぼくは思った。
たいへん気の毒に思ったが、朝乃山は処分にめげることなく 6場所の出場停止を耐えて三段目か序二段から再出発し、ふたたび前頭まで戻ってきた。ところが今度は大けがをして休場が続き、また三段目か序二段に位を落としたが、現在は幕下まで番付を戻してきた。今年のうちには幕内に復帰するだろうと期待している。
今日(5月29日)午後のNHKテレビ「列島ニュース」の富山局発で、朝乃山の令和元年初場所の優勝額が地元の富山市役所に寄贈され、お披露目が行われたことが報じられていた(上の写真)。
久しぶりに朝乃山の明るい笑顔を画面で見ることができてほっとした。これからも無理をしないで頑張ってぜひ幕内に戻ってきてほしい。彼ならきっと成し遂げることだろう。富山県人は我慢強い。
しかし、ぼくは朝乃山の健闘を祈りつつ、2020年1月以来つづけてきた相撲のテレビ観戦(テレビ桟敷)は先場所をもってやめることにした。今場所も一切見なかった。大相撲はもう見たくなくなってしまった。
2025年5月29日 記