餃子

2012-03-06 00:54:16 | 美食
時々、餃子を焼きたくなる
食べたくなる、ではない

大学に入るまで餃子をちゃんと食べたことがなかったので
正しい餃子の食べ方、おいしい餃子の味を知らない

しかし焼き方なら知っている
6ヵ月ラーメン屋で働いたから

住まいの近くの麺工場にアルバイ募集の貼り紙があったので
ここなら年齢制限はなさそうだと入ってみたら
有無を言わさずラーメン屋のチェーン店に派遣された

平日はA店で、土日はB店で給仕と皿洗い
そして混んで来ると餃子も焼かされた
油がべとべとのガス台とフライパンで

A店には喘息と心臓病でガイコツのようなおじ(ぃ)さんがいた
B店には脱サラに失敗したオヤジとフリンで家を出されたオバサンがいた
元ホストで貫禄のある社長が時々視察にやって来
そのパトロンでバリバリセイケイの大姐御も付いて来た

おもしろかったかって?
べつに

でもA店のおじ(ぃ)さんが
ある日「あそこの弁当やでこれだけ何か買ってきて、まかせるから」
と千円をくれた
戻ってくると「これは石井さんの昼ごはん」と言われた
従業員は店のメニューのどれを食べてもよかったが
私がラーメンや餃子を食べたくないのをおじ(ぃ)さんはわかっていた
これが私の辞書には数文字しか書いてないニンジョーというものかと思った

A店もB店もなくなった
あのおじ(ぃ)さんは元気…な筈なかろう

あのときのことを忘れないために
焼き方を忘れないために
時々、餃子を焼きたくなる

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