本書は、「ブタカン」シリーズの完結編となる。何度も言っているようだが、「ブタカン」とは豚の缶詰ではない。「舞台監督」の略である。
本作では、主人公の美咲も3年生になった。そして2巻までの3年生は卒業。それぞれの進路に。前部長の早乙女君だけは浪人が確定して、予備校通い。
この巻では、美咲が演劇部に入るきっかけとなった親友のナナコが復帰する。彼女は、珍しい病気で長期入院していたため、2年生への編入だ。
この巻でも事件が起きる。謎の脅迫文が、演劇部のスタッフの一人であるトミーの下駄箱に入っていたり、1,2年が5人、自分たちの演劇をやりたいので同好会を作り、大量脱退したり。そして3年生も夏休みは受験に専念するため予備校に行きたいと、例年文化祭で講演しているのに、夏休前に講演することになる。そして、元子役で演劇部にはなくてはならない存在になったジュリアにも不審な動きが。おまけにせっかく復帰したナナコもオーストラリアに留学するという。
前部長で卒業生の早乙女先輩。大学にはどこもふられたようだが、浪人生活がよほど暇なのか、演劇部に入りびたり。でも美咲のことは気に入っているようだ。大学でもいっしょに演劇をやる気満々である。
「最低でもあと四年はやるぞ。そしたら、いつか、『愛してる』の『あ』ぐらいは言ってやってもいい」(p184)
その時は、「はっ?」となった美咲もまんざらではないようで、結局は早乙女と一緒に演劇をやりたいらしい。
「・・・・・・『愛してる』の『あ』くらいは、言わせてあげてもいいです」(p298)
さて、このあと二人の関係はどうなるのか。余韻を持たせての完結。大学編も読んでみたいものだが、もっとラブコメ度が高くなるのだろうか。
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※初出は、「風竜胆の書評」です。