文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

泣くなブタカン!: 池谷美咲の演劇部日誌

2021-02-14 11:17:54 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 本書は、「ブタカン」シリーズの完結編となる。何度も言っているようだが、「ブタカン」とは豚の缶詰ではない。「舞台監督」の略である。

 本作では、主人公の美咲も3年生になった。そして2巻までの3年生は卒業。それぞれの進路に。前部長の早乙女君だけは浪人が確定して、予備校通い。

 この巻では、美咲が演劇部に入るきっかけとなった親友のナナコが復帰する。彼女は、珍しい病気で長期入院していたため、2年生への編入だ。

 この巻でも事件が起きる。謎の脅迫文が、演劇部のスタッフの一人であるトミーの下駄箱に入っていたり、1,2年が5人、自分たちの演劇をやりたいので同好会を作り、大量脱退したり。そして3年生も夏休みは受験に専念するため予備校に行きたいと、例年文化祭で講演しているのに、夏休前に講演することになる。そして、元子役で演劇部にはなくてはならない存在になったジュリアにも不審な動きが。おまけにせっかく復帰したナナコもオーストラリアに留学するという。

 前部長で卒業生の早乙女先輩。大学にはどこもふられたようだが、浪人生活がよほど暇なのか、演劇部に入りびたり。でも美咲のことは気に入っているようだ。大学でもいっしょに演劇をやる気満々である。

「最低でもあと四年はやるぞ。そしたら、いつか、『愛してる』の『あ』ぐらいは言ってやってもいい」(p184)



 その時は、「はっ?」となった美咲もまんざらではないようで、結局は早乙女と一緒に演劇をやりたいらしい。

「・・・・・・『愛してる』の『あ』くらいは、言わせてあげてもいいです」(p298)



 さて、このあと二人の関係はどうなるのか。余韻を持たせての完結。大学編も読んでみたいものだが、もっとラブコメ度が高くなるのだろうか。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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秋田大学通信教育「応用地質学」の報告課題が返ってきた

2021-02-13 16:58:12 | 秋田大学通信教育

 秋田大学通信教育「地球科学コース」のうち「応用地質学」の報告課題が返ってきた。結果は80B。これで、現在提出しているものは全て帰ってきた。

 放送大学の「データベース」の方は成績区分は分からないが、裏技で確認した結果合格しているようで6回目の卒業ということになりそうだ。放送大学の方は、「生活と福祉コース」を卒業すればコンプリートしたことになる。

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評伝 小室直樹(上)

2021-02-12 09:11:41 | 書評:小説(その他)

 

 小室直樹さんといえば、もう亡くなられて10年になるが、「変なおじさん」と記憶している人も多いものと思う。

 確かに、「変なおじさん」なのだが、私は小室さんを評価している。「変人」だけど「天才」だと思う。それは、別に彼の政治思想に共鳴しているからではない。小室さんの「論理の方法」(東洋経済新報社)を読んでからで、小室さんは、論理を使いこなすためには、まずモデルを作ることの大切さを喝破しているからだ。モデルによって分析を行うことは理系の人たち(少なくともあるレベル以上の人たち)には常識的なことなのだが、小室さんは社会科学においてもモデルの重要さを説いている。これは目から鱗が落ちるようなことだ。本書は、その小室さんに関する評伝である。

 彼は、東京で、母チヨの姓を持つ爲田直樹として生まれた。その後父である小室隆吉が認知し、更には、父と母が結婚したため小室直樹となった。しかし、比較的裕福だった小室家も父が亡くなり、生活が厳しくなる。そのため小室さんは母の生まれ育った会津の地で叔母に育てられた。彼は、極貧の暮らしながら、旧制会津中学から新制会津高校に進み、そして、学部は京大理学部数学科を出て、修士は大阪大学経済学研究科、博士は東大法学政治学研究科で取っている。この間色々あったようだが、彼の進む道の変遷はなかなか興味深い。

 西の天才が南方熊楠なら、小室さんは東の天才と言えるだろう。その過激な物言いに、反発も多かったが、彼の弟子と言われる人も多い。彼は酒と猫を愛したが、暮しぶりは清貧そのもの。晩年、著書がベストセラーになったりしたので、少し裕福になったが、それでも派手な暮らしとは縁がなかった。

 小室さんは多くの著書を書いているが、時代の流れとともに多くが忘れ去られていっているように思う。このような中でこういう人がいたという評伝を著すことは大切なことだろう。本書は分厚く、上下巻に分かれており、それぞれ700ページ弱あるが、内容がなかなか興味深く、直ぐ読み終えてしまった。

☆☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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栄光なき天才たち 大合本1

2021-02-10 11:43:47 | 書評:その他

 

 この作品は、昔ヤングジャンプに連載されていたことを記憶している。調べてみると1986~1992年のようだ。もっと昔だと思っていたが、人の記憶とはあてにならないもの。本書の特徴としては、忘れ去られた才能にスポットをあてていること。この第1巻に描かれているのは、マラソンのアベベ、円谷幸吉、映画のD・W・グリフィスそしてマリリンモンロー。

 マリリン・モンローはともかく、他は知らないという人も多いのではないか。アベベや円谷はある年代の人なら知っているかもしれない。特に円谷は彼の苦悩を、ピンク・ピクルスという女性フォークヂュオが「一人の道」と言う歌にして歌っていた。だが、グリフィスを知っているのはよほどの映画通だろう。

 登場人物に共通しているのは、一世を風靡したが、最後はあまりいい終わり方ではなかったということ。そして、今はあまり知っている人がいないということか。しかし、これらの人物は偉大な仕事をしたにも関わらず、放っておけば、歴史の中に埋もれてしまうことだろう。このような作品を残すことには大いに意義があると思う。この作品に取り上げられている人に興味を持った人は、自分で更に調べてみてもいいと思う。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

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人気NO.1予備校講師が実践! 「また会いたい」と思われる話し方

2021-02-08 09:02:26 | 書評:ビジネス

 

 皆さんはこんなことを思ったことはないだろうか。同じことを言っているのに、Aさんはすんなりと受け入れられるのに、Bさんだと反発を招く。そう内容も大事だが、話し方も大事なのである。

 何かを相手に伝えようと思ったら、相手に信頼され、興味を持たれて、受け入れてもらうことが不可欠だろう。そうでないと、いくら言っても、拒否感の方が先に立ち、話がうまく伝わらないことも多い。本書は自らの体験をもとに、どのような話し方をすればよいのかについてのヒントが詰まっているように思える。

 ただ幾つか気になることがある。著者の東大コンプレックスのようなものが透けて見えるのである。例えば次のような記述だ。

「偏差値30台→偏差値70超→東大の入試よりも難しい採用試験を最年少合格」(p120)



 それに東大院で研究をしているということは巻末の著者略歴に書かれているのに、どうして出身大学(ネットで調べると立教大学らしい)については書いていないんだろう。

 これも気になる。言い過ぎているのだ。

「私は予備校講師として、これまで東京大学に500人以上、医学部には2000人以上合格させてきました」(p61)



 著者は予備校で化学の講師だった。私は京大だが、入試の配点で理系は理科は2科目なので、化学は、900点のううち100点しかない。いくら化学だけ得点しても、他の科目でも点が取れないと合格できないだろう。

 また、あたかも偏差値と言う絶対的なものさしがあるような記載がされているのも気になる。私は、偏差値とは同じ母集団内で比べることができるもので、私大と国立大の偏差値なんて比べられるわけがないし、個人の偏差値なんて試験の都度変動して当たり前だと思っている。

☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ふだじょ!~乙女召喚脱衣大戦~(1)

2021-02-06 08:29:14 | 書評:その他

 

 ふだじょと聞いて何を連想するだろうか。べんじょとは何の関係もない。札付きの女子というわけではない。文字通り、女子がカードすなわち札になってバトルするという話である。

 主人公は、町田学という王麒麟高校に通うカードゲーム好きの受験生。ゲームのサークルに入っていたが、橋本という後輩にいじめられてサークルを追い出されてしまう。(この時点でかなりのヘタレ)橋本は、全国大会でも上位に入る実力者だった。

 ところが、あこがれの小山田桜と公園で話しているときに、突然彼女がカードになってしまう。その時現れたヤクシーケ王国の第三王女リイスの言うことには、彼女は平行世界から来た人間だという。彼女の世界では、争いごとが多く、それを解決するために代理戦争が行われる。その代理戦争というのが、平行世界の中からランダムに戦場や代理戦闘者を選ぶと言うもの。(ホントはた迷惑な制度だが、そういう設定なのだ)

 その代理戦争というのが、女生徒が学校内で戦うというカード式学園バトル。そして実際の戦いは、カードになった女子を召喚して、野球拳とか早着替えなんかをやらせるというもの。女子はあんな格好やこんな格好を・・・。

 最初のバトル相手となったのが因縁の橋本(と彼の使う森野旭という1学年下の女子のカード)。負ければカードを相手に取られてしまうらしい。もし負ければあこがれの小山田さんが橋本からエッチなことを・・・。

 相手からカードを奪うと、波長を合わせるために粘膜と粘膜を触れ合わさないといけないらしい。いったいどこを・・・。

 他にも小山田ラブの妹分の牡丹、同盟者でやたらと結婚を迫る真行寺泉などヘンな人が一杯登場。エッチな場面も多いけど、それ以上に笑える。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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秋田大学通信教育「応用地質学」の提出課題を投函

2021-02-04 10:37:23 | 秋田大学通信教育

 秋田大学通信教育「地球科学コース」のうち、「応用地質学」の提出課題を近くのポストに投函してきた。このコースはじめての2単位科目だ。「一般科学技術コース」に比べるとものすごく早いペースである。去年の8月から始めたので、このペースでいくと、1年で修了に必要な10単位を充足できるペースだ。まあ、もったいないので、全科目修了するまで、在籍するつもりだが。

 

 

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データベース

2021-02-04 09:28:05 | 書評:学術教養(科学・工学)

 

 本書は、放送大学の科目の教材の一つだ。表紙には編著者の二人が書かれているが、実は、後二人分担執筆者がいる。

 ところで、データベースというと経産省主催の情報処理試験のうちデータベーススペシャリストを思い浮かべる人も多いと思う。

 本書は、データベースとは何かから始まり、実際に用いられているデータベースの特徴、設計法などが一通り解説されているので、国家試験の合格を目指している人にも、基礎力を付けるには大いに役立つことだろう。本書に問題集を併用して勉強すればかなりの効果があるものと思われる。

 各章末には演習課題が付けられており、これらをやってみることにより、本書に書かれてあることの理解を助けるものと思う。ただ残念なことにこれらの課題の解答は付けられていないので略解程度は付けて欲しかったと思う人は多いのではないだろうか。

 放送大学の科目としてはテレビ科目(ラジオ科目ではなく)であり、科目改正がない限り、放送大学に入ればネットで授業を視ることができるし、放送大学に入らなくてもBS放送で視ることができる。今、確認すると2021年度1学期の科目にも入っていたので、来年度は大丈夫だと思うが、2017年度の科目なので、そろそろ改正があるかもしれない。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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風のなかの櫻香

2021-02-03 08:49:37 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 奈良斑鳩の法隆寺に隣接して、中宮寺がある。聖徳太子が開基とも伝えられる、歴史ある門跡尼寺である。この中宮寺をモデルにした尊宮寺に、櫻香(さくらこ)という少女が、施設から引きとられる。内田康夫による浅見光彦シリーズのひとつ、「風のなかの櫻香」(徳間文庫)だ。

 尊宮寺門跡の養女として、厳しくも大切に育てられた櫻香だが、彼女が中学生になると、「櫻香を出家させるな」という謎の手紙が届いたり、彼女の周りに不審な人物がうろついたりといった出来事が起こり始める。どうも、櫻香には、何か出生に関する秘密があるようだ。光彦は、尊宮寺門跡と懇意な母の雪江のいいつけで、事件の背後を調べ始める。

 この作品に女性はたくさん登場するが、やはりヒロインはこの櫻香だろう。「しまなみ幻想」では、15歳の村上咲枝がヒロインだったが、櫻香は、中学生になったばかりということだから、咲枝よりもっと若い。光彦には、さすがにロリコンの気は無いようで、このシリーズに付き物の、ヒロインとのほのかなロマンスの香りというものは無かった。しかし、櫻香はいまどきの中学生とは思えないようなしっかりした少女で、なかなか好感の持てるキャラである。もっと成長した姿を見たいと思うが、このシリーズ100作を超えていても、ずっと光彦が33歳の時の話という設定なので無理だろうな。

 事件の方は、奈良、京都、鳥羽を結ぶ不思議な因縁の糸が櫻香の一点に収束していく。作品中でも使われていたと思うが、まさに仏縁という呼び方が相応しいような驚くべき人間関係が明らかになる。そして、最後に見せたのは、光彦流の粋な解決。光彦は、事件を明らかにする際にも、周りの人たちへの影響を考慮したり、事件に至った事情を斟酌し、杓子定規な解決法は取らないのである。これが、光彦を他の名探偵と一線を画している大きな魅力だ。

 ところで、中宮寺の本尊は、てっきり弥勒菩薩だと思っていたのだが、この作品には、如意輪観音とあった。調べてみると、中宮司のホームページには、確かに如意輪観音と明記されている。弥勒菩薩という見方もあるようだが、如意輪観音というのが寺の公式見解だとは知らなかった。こういった豆知識が得られるのも、この作品の大きな特徴である。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

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九州喫茶案内

2021-02-02 10:04:39 | 書評:その他

 

 本書には、九州と沖縄の味のある喫茶店が写真とエッセイで紹介されている。多くは経営者の写真も入っており、どんな人がやっているかが分かり親近感が高まる。メニューや各メニューの金額も入っており、至れり尽くせりである。

 面白いと思ったのは熊本県にある「琥珀色の珈琲アロー」のマスター八井巌さん。御年84歳になるのにつやつやしている。何でも1日に30~40杯のコーヒーを飲んでいるとか。この店のコーヒーの値段が500円なので、1日30杯としても、月30日分で45万円だ。すぐに財布がパンクしてしまうだろう。そもそもそんな量は飲めないのだが。(私の場合はインスタントは飲まないが、一杯分のドリップコーヒーでコストパフォーマンスの良いものを数杯飲む。味はあまり気にしない。)

 なお、本文の方は県別と内容から大まかな位置しか分からないが、巻末に正確な住所や電話番号が収録されているので、もし近くに行くことがあり、興味があれば参考になるものと思う。

 今はコロナ禍で移動するのもはばかられるが、これが終息し、機会があれば行ってみたいと思った。皆さんも、本書で気になる店があれば、旅の目的地に入れてみてはいかが。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

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