うまい雑草、ヤバイ野草 日本人が食べてきた薬草・山菜・猛毒草 魅惑的な植物の見分け方から調理法まで (サイエンス・アイ新書) | |
クリエーター情報なし | |
ソフトバンククリエイティブ |
・森昭彦
本書は、タイトルの通り、身近に見られる雑草、野草について、それが食べられるものかどうか、食べるとしたら、いつが旬か。どこをそうやって食べるのかといったことを示したものだ。
テレビで、俳優の岡本信人さんが、その辺りに生えている草を食べているのをよく目にする。雑草だって食べられるものが多いのだ。しかし全部がそうではない。毒があるものもあるし、毒はなくてもまずくてとても食べられないものもある。本書は、そのような観点から雑草・野草を、「食べられる」「まずくて食べられない」、「有毒」の3つに分類している。
しかし、「有毒」だから食べられないとは限らない。救荒植物として有名なヒガンバナやソテツは有毒だが、飢饉時には毒抜きをして食べられた。また毒草と薬草は紙一重。薬として使われるものも多い。その逆で、普通に食用にされているものについても、有害物質が含まれているので、灰汁抜きをしないといけないものもある。
裏表紙に、「日本人は・・(略)・・・「毒抜き」・・(略)・・を確立してきました」とあったので、毒草についても、食べられるようにする方法が載っているのかと期待していた。しかしトリカブトを薬用として使うときの減毒加工について書いてあるだけで、他の植物については特に書かれていない。まあ、うっかり真似されて、なにかあったら大変だということかもしれないが。
しかしあの河豚の卵巣も、糠漬けにして毒を抜いておいしく食べてしまう我が国のこと。ここに紹介されている毒草も、やがては誰かが毒抜きをしておいしく食べられるようにしてしまうかもしれない。もっとも、素人は決してそんなことをやろうとは思わないことだ。さもないと、本当に「ヤバイ」ことになってしまう。
☆☆☆☆
※本記事は、「風竜胆の書評」に掲載したものです。