文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
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書評:危機の心理学

2018-02-01 08:53:23 | 書評:学術・教養(人文・社会他)
危機の心理学 (放送大学教材)
クリエーター情報なし
放送大学教育振興会

・森津太子、星薫


 本書は放送大学「心理と教育」の中の1科目となっているものの教科書である。

 私たちは色々なリスクに取り巻かれているが、その事を正しく理解して行動できているとは限らない。人間はヒューマンエラーを起こす生き物だし、認知自体にも様々なバイアスがかかる。

 例えば、リスクの判断において感情は大きな要因となる。怖いと思い込んでしまうと、実態以上にリスクがあると判断してしまう。

 また、大学生と警官を比較すると、前者の方が、軽めの犯罪の発生頻度を過小評価する反面、凶悪だが発生頻度の少ない犯罪を過大視する傾向があるという。

 この原因としてあげられるのがマスコミ報道の影響だ。凶悪な事件が発生すると、連日マスコミが事件の報道をする。それが私たちの判断にバイアスを形成するのである。

 一方警官にはそのような認知の歪みは見られなかったという。犯罪について知識をもっているからだ。寺田寅彦の言うように「正しく恐れる」ことは、なかなか難しいようだ。

 本書を十分に読みこなせば、リスクに対する人間の行動特性が理解でき、噂や風評に踊らされることも少なくなるのではないだろうか。間違った行動を少なくするためにも、ぜひ一読する事を勧めたい。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。
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