主人公は正式名マリー・フォン・ゴルドー(以下マリー)という公爵令嬢。王太子のルグニスと婚約していたが、パーティの際に突然二卵性双生児の妹グリージョに非道を働いていたという理由で婚約を解消され、国外追放を言い渡される。もちろんマリーはそんなことはしていない。すべてグリージョの嘘である。グリージョは自分が王妃になりたいのでそんな嘘をついて姉を陥れたのだ。王太子なら、ある程度裏を取るのも難しくないと思うのだが、グリージョの嘘をそのまま信じたのだろう。この時点で王太子はバカだと思うが異世界ものにはよくある設定だ。
この世界は異世界であるが、魔法が極端に衰退している世界である。ただし治癒魔法だけが法術と名を変えて残っていた。そしてマリーは法術を一切使えない「落ちこぼれ令嬢」と見做されていた。一方、妹のグリージョは次世代の大聖女と見做されていた。王太子ルグニスは、法術の使えない「落ちこぼれ令嬢」と次代の大聖女を交換したかったのだろう。
ところが、マリーは婚約破棄を告げられたときに前世の記憶を取り戻す。ラブマリー時代に人々を絶望に陥れていた魔王デスデモーナを討伐し、彼女は魔女神と二つ名つけられた大魔法使いだったのだ。そして今のマリーは、あの時代より潤沢な魔力をその身に宿していた。法術を使えない代わりに、上位互換ともいえる莫大な魔力を持つ唯一の魔女だったのである。そしてグリージョの法術は、マリーの魔力によって強化されていたにすぎないのである。
もちろん「ざまー」的な展開になるのだが、最強の魔女マリーは婚約破棄をこれ幸いと旅に出る。途中で獣人の少年カイト(特技料理)と悪魔のオセ(特技毒や調味料の生成)を道連れに色々なところを旅するという話である。もはや王国には何の思い入れもない。実は彼女を動かしているのは美味しいものを食べたいという食欲だけなのであるが、周りはそれをツンデレだと勘違いして、どんどん信者?が増えていく。この勘違いぶりがなんとも面白い。
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