フリーライターとして稼いでいく方法、教えます。 | |
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実務教育出版 |
・肥沼和之
本書は、全くの未経験者から、ライターになるためにはどうすれば良いのかを、著者の経験を基に示したものだ。
私などは、フリーのライターに対する多少の憧れもあったのだが(おそらく、内田康夫さんの「浅見光彦シリーズ」の影響が強いと思う)、本書を読んでいくと、なかなか厳しいライター界の事情が垣間見え、たいへんな世界だなということを感じる。
著者は、会社員だったときは300万円だった年収が、ライターになって800万円になったという。会社員時代の年収が低すぎるというのはさておき、この800万円というのは、どの時点の数字なのだろう。駆け出しのライターがいきなり800万円も稼げるわけはないので、現時点の数字だろうと思うが、ここは時間単価を知りたいところだ。
この800万円という金額も、これだけを見ると、果たして稼いでいるといえるかどうかは微妙なところがあるのだが、編集プロや文壇バーとの兼業のようだから、かなりいい数字なのだろうか。もっとも兼業している仕事もライターの仕事に役立つだろうから、それらとの相互効果も結構あるのかもしれない。
ライターの仕事で稼ごうと思えば、実績作りが大切だ。これにつけ込んで、ライターをタダで使おうとする連中もいるので気を付けなければいけない。著者の言う通り、その仕事を受けて、自分にどのようなメリットがあるかを考えないといけないのだろう。
本書を読むと、一番大切なのは、編集者とのコネを築いていくかということのように思える。例えば、出版社にいきなり企画を送ってもけんもほろろといった扱いをされがちだが、編集者を通して提出すると、態度がずいぶんちがってくるらしい。
これに加えて、自分ならではの専門性を持つことや、自分のスタイルを持つことも重要になってくる。いかに自分も売り込むのかといったことも大切だ。文章力自体は、訓練次第で上達するが、その前に何を書くかを企画する力も大切なようだ。
著者は、ライターの醍醐味は、色々なところでの取材を通じて、非日常が体験できることだという。ヤ○ザの事務所に行ったことも貴重な経験だったというが、さすがに私はそんな経験はしたくない。ということは、私にはライターは無理なのか(笑)。でも、自分の専門性を活かした分野ならなんとか・・・。
ただ、本書に書かれていることは、東京ならではのことも多いように思う。例えば地方では、編集者とコネを築こうにも回りにはそんな人なんていないのだから、かなりのハンデがあるだろう。しかし、最近のネットメディアの発達もあり、何らかの方法はありそうだ。地方在住者がもしライターを目指すなら、本書に書かれていることに加えて、更なる戦略が必要だろう。
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※本記事は、「風竜胆の書評」に掲載したものです。