本書は、早稲田大学ビジネススクールでの講義を公開したものだ。このビジネススクールと言うのは大学院の修士課程にあたり、修了すればMBAの学位が与えられる。だから本書は大学院での講義のように15講+補講3講の合計18講からなり立っている。
著者の遠藤さんは、早稲田の商学部を卒業し、米国ボストンカレッジ経営大学院でMBAを取得している。本書の初版は2011年7月付だが、当時は早稲田大学ビジネススクール教授(2006-2016)だった。
本書はよく使われる経営戦略のフレームワークがひととおり示されており、これらに習熟しておけばきっと経営戦略を立案する時の助けになるだろう。ただし、いいものを作ろうと思ったら、ある程度の年季と、正しい情報が必要なのは言うまでもない。
そして経営戦略は、本書に書かれているように、不変のものではない。
「(前略)その一方で、どんなに多くの情報を集めても、またその情報の分析にどれほど力を入れようとも、立案段階で完璧な経営戦略にはなりません。なぜなら、市場や顧客は絶えず変化し、その変化に従って競争も変化するからです。(後略)」(pp124-125)
つまり、経営戦略は環境の変化に合わせて、常にリバイズしていかなくてはならないということだろう。それにどこにブラックスワンが潜んでいるかもしれないので、不慮の出来事があっても影響をできるだけ小さくできるようにしておく必要がある。最近のブラックスワンの例を挙げれば東北大震災とコロナ禍だろうか。
また、本書には各講義にケーススタディが収録されているので、実際の企業を例に考えることもできるだろう。ただ。講義2にカルロス・ゴーン氏の日産改革の例が掲載されている。あの事件の顛末は知られている通りだが、これもひとつのブラックスワンなのだろうか。
☆☆☆☆