各巻の表紙イラストを見れば分かるように、物語の主役としての役割が、菊地鶴次郎に移っているのが分かる。といってもまだ藤掛飯伍ら隠密同心の面々は出てくるが、どの事件にも鶴次郎が関わってくるのだ。
この鶴次郎、腕っぷしはさっぱり、男ぶりも悪いとは言わないがそうモテそうにもない。でも、女性、特に訳アリの女には、命がけで掘れるので、そいうった女たちからは結構モテる。例えば、女白波など。でも彼に関係した女はみんな死んでいく。そこでついた二つ名が「死神鶴次郎」。
でもこの鶴次郎、自分では男前と思っているようだ。これ以上女性と関わりたくないが、向うから寄ってきた場合はどうしようかとお奉行さま(大岡越前)飯伍に行った時、
「なにしろ・・・ 自分で申すのも何ですが・・・・・・・・・ この男前ですので(11巻p213)
これには、お奉行様も飯伍も大笑い。それで、ひげを伸ばして、むささを前面に出すことになった。
連続女性暴行事件が続き、1人は惨殺された。そこでおとり捜査をすることになり、鶴次郎が女装して現れる。(12巻p201)これには、隠密廻り一同びっくり。飯伍などは、吐き気がおそってきたようだ。(12巻p203)
鶴次郎の腕の方だが、お役者ツル平事件のときに、娘の警備を頼んできた伊勢屋の主人から、こんなことを言われている。
「菊地さまがお腕が立つとは思ってもおりませぬが」(13巻p111)
そして15巻からは袖屋摺吉が登場する。この摺吉、妾腹だが、江戸一番と呼ばれる大商の倅で、御家人株を買って武士になったという変わり者だ。なぜか鶴次郎に懐いている。
笑える場面も結構あるのだが、各事件の結末は意外なものでなかなか面白い。最初は吹けば飛ぶようなキャラだったのに、だんだん存在感を増してくる鶴次郎がどうなっていくのかも楽しみだ。
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