本書は、著者による「法医昆虫学捜査官」シリーズの第4弾にあたる。
主人公は、法医昆虫学の大学准教授赤堀涼子。36歳だが童顔で、JKのようなノリだ。彼女と行動をともにするのが、警視庁の岩舘裕也警部補。そして、事件の起きた場所を管轄する所轄の刑事の組み合わせで、今回は犯行現場の仙谷村を管轄する四日市署の牛久弘之巡査長。山岳救助隊員でもある。
この3人が主に動いて、赤堀の昆虫学の知識で、事件を解決に導いていくというのがシリーズ共通の流れだ。
今回の事件は、牛久が、バラバラ死体の一部を見つけたことに始まる。関節の部分から三つに切断された男の両腕が見つかったのだ。しかし、解剖医の出した、死亡推定月日と、赤堀の見た昆虫の生態から導かれる死亡推定月日は大きく異なる。これはどういう訳だろう。
この作品では、主な登場人物はウジによる洗礼を受けることになっている。今回は、発見された腕から湧きだした大量のウジ。そして、死体が埋められていた場所で遭遇したウジの雨。想像しただけでゾッとして食欲が無くなる。
最後に意外な犯人が明らかになるが、そんな理由で殺人をするのなら、ちょっと、いやかなりサイコな人だろう。
ちょっとがっかりしたのは、警視庁管理官の伏見香菜子。捜査一課唯一人のキャリア組という設定だ。彼女は、最初から赤堀の言うことを否定している。反赤堀の急先鋒であり、言うなれば赤堀の天敵のような存在だが、やっていることは的外れなことばかり。
赤堀の能力を認めて、良い理解者になるというのならまだ話は分かるのだが、この管理官、あるところから全く出てこなくなった。要するに無能で先例主義を絵に描いたような人物なのだ。こんな上司がいれば、私なら、絶対に転職を考えるだろう。
☆☆☆☆
※初出は、「風竜胆の書評」です。