文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

銭形平次捕物控 213 一と目千両

2023-09-26 10:09:39 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 これも銭形平次シリーズのうちの一つだ。タイトルの一と目千両というのは、一と目見ることに千両の値打ちがあるという美女を例えたものだ。もちろんこの話を持ってきたのはおなじみ八五郎。東両国で人気の見せ物軽業の小屋に出ているお夢というのが、ものすごく美人で一と目見れば千両の価値があるのに、それがたったの木戸銭の十六文で見ることができるというのだ。

 ところが、このお夢が殺されそうになる。お夢が寝ていると、顔の上に二階から大火鉢が投げられたというのだ。おまけにその火鉢には煮えたぎる鉄瓶が掛けられていた。

 幸いお夢は風邪気味で布団を深くかぶって寝ていたので、軽いやけどだけで済んだとのことだが。

 この事件に興味を引かれた平次は、行ってみようという。これは平次には珍しいことだ。何しろものすごい無精者。その平次が自分から動こうというのである。これには八五郎、思わず「しめたツ」

 今度は、お夢と二枚看板であるお鈴という娘が狙われる。お鈴は美人ではないが17歳の可愛らしい娘である。お鈴は軽業専門で、張り渡された綱の上で飛んだり跳ねたりするのだが、綱の結び目のところに抜身の匕首が挟んであり、お鈴が軽業をすると切れるようになっていた。おかげでお鈴は右足を折ってしまい、直っても生涯曲芸は出来ないかもしれないという。

 この事件を平次は解き明かすのだが、実はお夢の事件とお鈴の事件は別の犯人によるものであった。この話を読むと「外面如菩薩内心如夜叉」という言葉が頭に浮かんだ。

 さてこの話の顛末だが、平次は誰も縛らなかった。犯人に同情したわけではない。今の刑事ドラマなら、絶対に逮捕しているのだろうが、平次は罰を天に任せたのだ。そして犯人の一人は行方知れず、一人は物乞いに落ちぶれ、しっかり罰を受けている。銭形平次にはこういった話が多い。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

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