文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

書評:日本のダム美:近代化を支えた石積み堰堤

2018-12-25 12:51:35 | 書評:学術教養(科学・工学)
日本のダム美:近代化を支えた石積み堰堤 (シリーズ・ニッポン再発見)
クリエーター情報なし
ミネルヴァ書房

・川崎秀明

 発電工学に関する科目を学ぶと水力発電に関するところで、ダムに関しても一通り勉強する。ダムの種類は、色々な観点から分類することができるが、重力ダム、アーチダム、バットレスダム、アースダム、ロックフィルダムなどがある。

 本書は、石積み堰堤という切り口から見たダムの魅力を一冊に纏めたものだ。石積み堰堤というのは、分類すれば重力ダムの一種なのだが、外側に石を積んで、目地をモルタルで固め、その内部には、礎石を置いた後にコンクリートやモルタルを流し込んだものである。

 要するにコンクリート重力ダムの一種であるが、日本では明治期に作られるようになり、戦後まもなくまで作られたものである。今は、外面もコンクリートとすることが一般的だ。なお、重力ダムというのは自重でダムを支えるものである。

 本書は、シリーズ・ニッポン再発見の一冊であり、石積み堰堤の歴史や使われた技術、実際の石積み堰堤の紹介などを纏めたものだ。本書を読むと石積み堰堤というのが治水、利水などの実用的なものというだけではなく、一種の文化財ということがよく分かる。

 私自身はアーチダムの形が美しいので好きだが、本書を読んで石積み堰堤というのもなかなかいい雰囲気を出していると思う。時代が古いためか、あまり聞いたことのないようなダムが多い。私の住んでいる中国地方でも帝釈川ダムくらいしか名前を聞いたことがあるものがないのは意外だった。

 最近はダムカードというものがある。本書をきっかけに色々なダムを訪れて集めてみるのも楽しいかもしれない。また、実物に興味があれば、本書を参考に実際に見に行って見るのもいいだろう。さらに、専門用語の解説が付いているため、本書を読み込めば誰でもいっぱしのダム通になれるものと思う。ダムファンには必読の一冊。

☆☆☆☆☆

コメント
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