文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

エネルギー問題に関するおかしな議論

2008-07-18 21:49:10 | オピニオン
 kmori58氏のブログ「kmoriのネタままプログラミング日記」の「電力会社がどんな苦労をしているのかぐらい知っとこう」 という記事に対して、Lipton氏のブログ 「【ニート】が勉強を始めたら…【ビジネス書を中心に】」に「電力会社は本当に苦労しているか? 」という反論が掲載されていた。

 電力の需要と発電量のバランスについて書かれたものだが、読んでみると、どうも議論がかみあっていない。

 kmori58氏は、「ノートPCの電源を入れたり切ったりするたびに、どこかの火力・水力発電所の出力を上げたり落としたりしているんですよ。ですから、あなたが節電すれば発電所の発電量も下がり、それが火力発電であれば、二酸化炭素排出量が減ることになるわけです。」と述べている。

 これに対して、Lipton氏は、「発電所が、『ノートPCの電源を入れたり切ったりするたびに、どこかの火力・水力発電所の出力を上げたり落としたりしている』のは、『電圧の一定維持』というのが目的で、これがエネルギー消費を抑制することを目的としたものにはなってはいない。・・(中略)・・『思っているほど、省エネ効果はないのでは』ということだ。」と反論している。

 kmori58氏は、単に電力需要と発電量はバランスしているので、需要を減らせば、火力発電量も減って、それが結果的に二酸化炭素を減らすと主張しているのである。この部分は全く正しい。PCの電源うんぬんは、単に需要を減らすための一例として掲げているにすぎないと思う。

 しかし、Lipton氏は、この部分だけをことさら取り上げて、エネルギー消費の大幅な削減は期待できないと言っている。PC電源の入り切りだけでは、電力需要全体から見れば誤差の範囲になるのは当たり前のことだ。多くの人々の心がけが積み重なった結果が、目に見えるエネルギーの節約につながるのである。

 発電機が出力上げたり下げたりしているのが「電圧の一定維持」というのも正しくない。正解は「周波数の一定維持」のためである。

 議論全体に対しては、kmori58の方に分があると思うが、最後のに「みんなが頑張って夜だけ節電するとベースロードを削らなくてはいけないことになり、昼の火力発電の稼働が上がってしまい、かえって二酸化炭素の排出量が増えてしまう結果になります。」というところは説明不足であろう。

 これは、原子力の一定運転を仮定するなら、ベースを超える部分は火力等で発電しなければならないため、あまりに夜の電力消費が少ないと、運転できる原子力が少なくなり、火力で発電する部分が増えてしまうと言っているのだ。実際は、石炭火力調整や揚水式発電所の運転によって、よっぽど極端な夜と昼のアンバランスがない限りは、そんなことはないのであるが。
 

 (記事内容が役に立ったら Clickしてね。) 
                 ⇒  人気blogランキングへ 


gooリサーチモニターに登録!

「読書と時折の旅(風と雲の郷 本館)」はこちら 

H20.8.1追記
「【ニート】が勉強を始めたら…【ビジネス書を中心に】」の「電力会社は本当に苦労しているか? 」と言う記事は削除されていましたので、リンクを記事から、ブログ自体に張り替えました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする