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「リオノーラの肖像」 ロバート・ゴダード 文春文庫 加地美知子訳

2012-11-26 | 読書



2011年の読書から

ゴダードの文庫本を見るたびに、この分厚くて、上下に分かれている本を読んでみたいと思っていた。読もうというより、そのうち最後までめげずに読んでみたい、と思っていた、ずいぶん前から。

さぁ、と思って5作品を買ってきた。初めて読むなら面白くなければ、といつかどこかで聞いていた「リオノーラの肖像」から読み始めた。

面白くてやめられず、夜更けまでかかり、読み終わったら目が疲れてバタンと寝てしまった。ストーリーは余り入り組んでいるので長く長く書いてしまいそうだし、さすがにうまく要約されている、訳者のあとがきを参考に写させてもらった。

* * *

ここに紹介する「リオノーラの肖像」はゴダードの二作目の作品。長い複雑な筋のミステリで、物語は、リオノーラ・ギャロウェイという七十歳の女性が、その人生のほとんどをついやして解き明かした秘密を娘に語り聞かせる形式をとっている。



ハンプシャーのミアンゲイトという貴族の館で、意地の悪い義理の祖母、レディ・パワーストックに苛められながら不幸な生い立ちをしたリオノーラは、幼いころから多くの疑問を抱え込んでいた。

彼女が生まれる前に第一次大戦の激戦地ソンムで戦死したという父親のこと、父の墓はどこにあるのかさえわからない。
彼女を生んですぐに亡くなったという母親のこと。

彼女が生まれる前の第一次大戦中にミアンゲイトでおこったという殺人事件。

彼女自身の出生をめぐる謎や、ミアンゲイトにたちこめるミステリの影。

が、そうした疑問や謎にたいする答えは決して彼女に明かされることはなかった。

思いもかけず幸福な結婚のチャンスに回り逢い、一人の子供に恵まれたリオノーラは、そうした疑問もふくめ、不幸な過去のいっさいを記憶から消しさろうとつとめる。

ところが、義理の祖母の死後ひょっこり訪ねてきた父親の戦友と名乗る男から、リオノーラはそれらすべての疑問に答えるという長い物語を聞かされる。

それでもなお解き明かされない謎や、あらたに生じた疑問が彼女に残った、だがそのあとの何十年ものあいだに折にふれて、秘められた真実が少しずつ姿をあらわし、七十歳になった彼女のまえに、ついに全貌が明らかになる。

* * *

あらすじは訳者の加地さんに助けてもらっても長い。

舞台で言うなら上手にリオノーラと娘のペネロピが話している、そこにスポットが当たったまま、舞台には厚い歴史の緞帳が幾重にも重なっていて、開いていく。
それにつ背景が変わり、それが謎を解く話につながっている、という入り組んだストーリになっている。
しかし、それが意表を衝かれるできごとであったり、運命の導きのようであったり、人の善意が作り出した謎や、利己的な欲から生まれたものだったり、あきない重厚な話が続いていく、最後はそれが全てつながって、感動的に幕が閉じる。

長いがとても面白かった。

続いて「闇に浮かぶ絵」上下。「千尋の闇」上下。「石に刻まれた時間」を読んだ、
「惜別の賦」は積んである。早く読まないといけないが、なにしろこれも5百ページを越す。


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