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「失踪当時の服装は」 カーリン・アルヴテーゲン 

2021-02-03 | 読書

 

 

米マサチューセッツの女子寮からふっと消えてしまったのは、美しく聡明で落ち着いた女生徒だった。気まぐれというのも彼女に合わない、深い付き合いのボーイフレンドもいなかった。
すぐに帰ってくるだろう、突然消えた娘は周りの願いも虚しくいつまでも帰らなかった。
全寮制のカレッジからいなくなった18歳、美しく聡明な娘は失踪か誘拐されたのか殺人か。

1952年発表の警察小説の嚆矢となる本格推理小説だという、ここから「警察捜査小説」が始まったということだが。今も全く古くなく優れたミステリの一つのジャンルをしっかり守っている。そんな警察小説は嬉しくて読まずにはいられない。かっちり出来上がっていてエンタメといえど少し姿勢をただして読むような力がある。

正しく犯人当てのフーダニット小説で、そこに特殊な背景や、人間関係があり、警察側には頭脳明晰のボス警察署長フォードがいて、脇に切れるが少し癖のある嫌味な奴や凡庸に見えて細かく気が付きよく働く部下が定石のように揃っている。気の利いたウィットに富んだ会話もよくできている。読んでよかった☆5つの名作だった。

ところが、読み始めてすぐ、あ!と気がついた(まだ一ページ目なのに)これではないか。彼女はこうしていなくなったのではないか。この何気ない一行が気になった。

捜査はなかなか進展しない。同室の寮生も、少し気分が悪そうで途中で授業を抜けたということしかわからない。
部屋からは着替えが少し無くなりハンドバックも見えない、出かけたらしいが姿を見たものもいなし、駅でも見かけられていない。

もう調べ尽くし訊き尽くし打つ手もなくなった。
だた一つ、一冊の日記帳を穴のあくほど読んでいた署長が疑問を持つ。


読みながら次第に思い通りの方向に進んでいくと、読者として緊張する。この小さな一言の手掛かりは、あそこに続くのかな。

しかしそうやすやすと問屋は下ろさないだろう。もし私の推理通りなら、なんと巧みに話を膨らまして警察官たちをへとへとになるまで働かせることか。親の嘆きの深いことか。
寮長の驚きや関係者の保身や男友達の慌てぶりや、すり寄ってくる記者たちや。

これで決まりかと思う容疑者たちを追い始めると、私の推理も揺らぎ始まるが、容疑も晴れて解放されてしまうとひょっとしたらひょっとして推理通りかも、、、と何か緊張して、またドキドキが始まる。

と、こんな感じでこの作品は心臓に悪いほど楽しませてくれた。久しぶりの大当たりで作者にはその話の迷路を構築した力に改めて驚いた。
 
 
緊急事態宣言も一か月延長になり、まずます冬籠り生活も長くなりました。こんな時こそ読書なのでしょうが、あまり条件が揃うと気が散って読書どころではなく、かえって雑用が増えます。
と言って断捨離も声ばかりで目に見えてすっきりしたとも思えません。「家」に訊いてみても身軽になったと言ってくれそうにもなくて、まだ冬物も夏物も少しも減らずにクローゼットにぶら下がっています。衣替えの頃が来たら半分は減らそうと思いますが。
 
足腰の運動を兼ねて少し早いですが、鉢植えの花を植え替え、庭の隅に腐葉土づくりのつもりで落ち葉を積み上げました。
おかげで、てきめんに運動不足がたたり、三日ほど筋肉痛で腰が曲がっていました。
 
動けないこともあって読了本の山から感想をひねり出しています。
すぐ書かないと忘れ始めたり、読んだのはいいが、どう書こうかと悩んでいる間に図書館の「次の方がお待ちです」の期限だったり、ちょっとした感想文にも手間取ります。
そんなこんなで何冊か頑張っています。
 
重い気分になるニュースが多いので、今年は「ほっこり心温まる本」を読もうと100冊ほどリストを作ったのですが、本棚で見つけたのが北欧ミステリで、「カーリン・アルヴテーゲン」という女性の作家に嵌りこんで、ミステリの海に潜って冬越しをすることになってしまいました。
 
ホッコリした読みやすい本も雪崩が起きない前にヨマネバと思いますが、それでもコロナ籠りが終わる時期が早いことを祈りつつ。

 

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