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「あなたが愛した記憶」 誉田哲也 集英社文庫

2021-06-10 | 読書

 

良くも悪くも誉田哲也 #ナツイチ(集英社)
 
ああやっと気がついた、思い出した。読んで楽しかった面白い本ベストに入れている誉田哲也の「武士道シックスティーン」は彼の作風の一部だった。(続いて神去りなあなあがなど来るw)

若いし、まだこれから充実した代表作が出るだろうけれど、今のところ「ジウ」「ストローベリーナイト」に始まる姫川警部補のシリーズを書いている人という印象で。
過去にどちらも一話だけは読んでみたが、作品にはホラー作家だなと思えるグロテスクでショッキングなシーンが多くあった。
人気は元気な女主人公にあるのかもしれないし、警察小説としても読みどころがある。私などのようなミステリっこは誉田さんは定番。
ただ読者の好みはわかれるところだと思う。

この「あなたが愛した記憶」は題名のソフトな雰囲気とは全く違う内容で、読み始めから少し引き気味だった。

残酷な殺人事件が、同じ形で二件連続で起きる。ここからは警察の分野かと思ったが、そうではなく、まず背景の事件に絡まる人たちが動き出す。

大人びた高校生の民代が興信所に来て唐突に調査員の栄治に向かって父親だという。そして二人の人間を探してほしいという。

これが発端で、関係者のつながりがずるずると引き出される。栄治が知らなかった出来事が次第に明らかになる、つながりというと、ここでは魂(人格)の継承で、宿主になる肉親の体に、消滅前に入り込む。ホラー的な雰囲気に入っていく。
肉体は魂の物という考え方で、それぞれ性別年齢は違っても血の繋がりがあり、記憶が残っていく。

調べるにつれて残酷な事実が暴きだされていく。自分と血の繋がった命を絶やしてはいけない。という世界があり、
そういった犯人の目的のまわりで、そのことに気がついた関係者の、悲運や懊悩なども絡めてなかなか酷な運命が展開する。

この魂の継承(輪廻の一端というか)が 新しく目標になった肉体を持つ人間の意識と現実を結んでいく発想はさすがだと思うが。

ただ小説を読む楽しみの一環は主人公の魅力だったりストーリーの面白さだったりする。

ここではあまり魅力的な人物はいない。事件も稀なケース(魂がホラーかSF風味で継承されていくこと)が突然の血縁者になって繋がっていく人々の忘れていた過去が蘇るところもなにか予想通りで新味がない。

面白かったかと言えば、どこにでもあるホラー小説の一つのようで、親子や異性愛の話もそこそこで、気味悪い思いだけが残った。
 
 

 

 


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