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「熱い読書 冷たい読書」 辻原登 マガジンハウス

2020-01-27 | 読書


本好きは、自分の好きな本を大好きと言ってくれる人に会うと「でしょう、ねっ!そうでしょう」と肩をたたきあって、瞬間、本友になる。そんな一冊。

ここには79冊の本が紹介されている。その79の本にまつわるエッセイを集めたもので、2000年のものが一番新しい。だから今読むと少し時代をさかのぼるけれど、読んでいるうちに、時の境があいまいになり、いい本はいいのだと感動が蘇る。そう、そうなんだと。

辻原さんの子供時代から作家になった現在まで、本の底には自伝的な連想、交友の思い出、忘れられない本との思いが、本に寄せて底辺に詰まっているのが親しみ深くていい。詩的で美しい文章もすっかり好きになった。

ここで初めて読んだ本は作家の眼でも、そんなに面白いのか、興味深いのか、名作なのか、なら必ず読んでみようと思う。
読んだことがある本は、神髄はそこにあるのか、と新しい眼が開く。
とにかく選ばれた本がいい。まだどこの本屋さんでも置いてあるようなよく知られたものが多いのもいい。
順に、一部を紹介

*四十九日の物語 カフカ「変身」
 
友人の四十九日をきっかけに思うこと、過労で死んだザムザを家族は驚き悲しみそして嫌悪する。ザムザが冒頭で死んでから話の終わりまで一か月半、彼の精神も死を受け入れる時間だ
と日常に照らし合わせて読んでいる。興味深い。

*チャーミングな女子大生
もう出た(^▽^)/ 北村薫さんの「円紫さんと私」から「夜の蝉」 会話が素晴らしい。「わたし」が楽しみながらやたらと読む本を、次に読むときは栞もなしにパッと開く、これに辻原さんはちょっと嫉妬、とか。 だからわたしはスピンの付いている新潮文庫の大ファンなのかも。それだけじゃ無いけど、、。
*歴史の「イフ」が牙をむく ケン・フォレット「針の眼」
「鷲は舞い降りた」もまだ読まないで積読、発酵してこの話になったのかな。
名作「針の眼」を本棚に入れる。
*彼はいったいどこから来たのか? ゴーゴリ「外套」
襤褸でもよかったアカーキイ・アカーキエヴィチの外套。この話には裏がありそうだ「死せる魂」のように。

アカーキイは悲しみのあまり幽霊になるのではなく、もともと歪んだ暗い世界から派遣された幽霊だったのでは?
  それらの話の展開も興味深い。

*「錦秋」の別かれた男女の愛、この感想を読んで、それだけで感動した。
*「高野聖・眉かくしの霊」 「語り」の妙を充分に尽くした傑作。
*「免疫の意味論」多田富雄

われわれの近代、その進歩もヒューマニズムも、自己が自己を攻撃しない免疫系という善なるネットワークの上に築かれていたのだ。
そして、多田の論述は、もともと自己と非自己から守るなどというそんな王国は一度も存在したことはなかった。砂上の楼閣に過ぎなかったのだ、とまで及んでわれわれを混沌の中に宙吊りにする。


読んでいる本はさすがその表現に脱帽、読んでない本はすぐにでも手が伸びそうになる。

79編、で一編が約三ページに収まっている。到底引用できないので、同じ本を買ってしまった。その上「冬の旅」「遊動亭円木」も読むつもり。
こうして本が溢れてくるのね (´;ω;`)ウッ…



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