空耳 soramimi

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「断罪」 和久俊三 徳間書店

2018-08-27 | 読書



「赤かぶ検事」など沢山の作品で親しんできた、和久峻三さんの作品をみつけた。1984年刊のずいぶん前のものだけれど、全く時代のずれを感じないで読了。


美貌には恵まれたが、倫理観の欠如で奔放すぎた生活の結果、誰の子供かも分らない息子がいる。
そんな母親の下で、上の20歳の息子が、溺愛されている3歳の息子にポットの熱湯を浴びせ、顔を無残にやけどをさせ、片方の目まで失明させてしまったという事件が起きる。

病院長をしている男が母親の浮気相手で、男には子供がない。妾宅で生まれた3歳の息子を、喜んで認知したことで、その子供は彼の相続人になり、将来が約束されている。

すでに20歳になっている息子が異父弟に対する嫉妬のために犯した罪だと、法廷で証言する母は、彼に対しては、一片の愛情もない。


弁護人の萩野は言った。
「一般的にいって、母性愛と言うのは、どういうものでしょうか?」

証言にたった、息子のかつての担任の女教師はいきなり疑問をぶつけられ、一瞬、戸惑ったかに見えたが、的確な言葉を選ぶのに、さほど時間はかからなかった。


「内外の心理学者の見解を総合しますと、母性愛と言うのは、犠牲と献身に裏打ちされた愛情だと考えられています」
「犠牲と献身ね」
彼女は言葉をつないだ。
「母性愛は、言うなれば、大人の愛でしょう。もっと、わかりやすい表現をすれば、捧げる愛とでも申しましょうか・・・・・・」
「捧げる愛? これと対照的なのは『奪う愛』と言うわけですか?」
「その通りです。自分が愛してもらいたいと、そのことばかりにとらわれているのが、『奪う愛』であり子供が親に愛されたいと思う気持が、これです。俗な言い方をすれば、未熟と言うか、未発達の愛なんです。若い人たちの恋愛感情も、これと通じるものがあります」
「要するに、積極的に自分を投げ出して、献身的に愛する、これが母性愛と考えてよろしいですか?」

恵まれない青年は苦しみながら生きてきた。彼を助ける弁護士と彼が愛する美しい教師。
法廷のやり取りも緊迫感があり、最後まで気を抜けないスリルがあり面白い。

虐げられた青年の悲哀が重く、最近読んだ中ではベストに入れてもいいくらいだった




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HNことなみ

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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Unknown (おしん)
2018-09-15 21:06:54
何だか深そうな本ですね(*_*)
でも「最近読んだ中のベスト」とは、カナリ期待できそうな本ですね!

また読書会前なのでコメントさせてもらいました。
9/22(土)の読書会、よろしくお願いしますm(_ _)m

そして連絡事項なのですが、ブログにはいつも通り「紹介する本1人3冊まで」と書いているのですが、今回から「1人2冊まで」に変更しようと思います。
急な連絡で申し訳ないですが、よろしくお願いしますm(_ _)m
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すみません (空耳)
2018-09-22 23:02:58
しばらくこちらを見なくて気が付きませんでした。遅いですがm(__)m
これは古い本なのでうちの本棚くらいしかないかもです(-_-;)
今日はお世話になりました。
最近少し忙しくて(いいわけでなく)やっと落ち着きました。
またこちらも頑張って更新します。
お世話になりました、来月もよろしくお願いいたします。
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