空耳 soramimi

あの日どんな日 日記風時間旅行で misako

「月の砂漠をさばさばと」 北村薫 新潮文庫

2015-08-12 | 読書


お母さんとさきちゃんは二人暮らし。おかあさんはお話を作る人なんだけど、悪戯が大好き。そんなお母さんをさきちゃんは大好き。
というほのぼのとした日常のお話が12編ある。

「くまの名前」
小学校三年生のさきちゃんはお母さんのお話しを聞くのが大好き、寝る前にお母さんがお話を見つけた話をしてくれた。
でもお話は、先に三毛猫さんに拾われ、そこで引っ張り合いになってお母さんは「お話!おはなし!」と叫んだのよ。
でもこのお話には熊さんがでてくるの、乱暴者でね、新井さんのおじさんが任せないさいって、くまさんを連れて行ったの。
それでくまさんの名前が変わって「アライグマ」さんになったわけ。
はしょった、かいつまんだ話ながら、こういうことをさきちゃんに話して聞かせるお母さんなのです。
母子家庭の日常の影もうっすらと漂う話なのです、おかあさんは上手にそんなお話にしてしまいます。

賢いお母さんの愉快なお話を聞きながらさきちゃんはすくすくと育ちます。

お母さんは、さきちゃんの連絡帳の書き込みに返事を書いてお友達になったりします。

お母さんはよくCDを聞いていて、自分でも歌を歌います、でたらめの。
「月の 砂漠を さばさばと さばの味噌煮が ゆーきーました」
さきちゃんはさばの味噌煮が砂漠を歩いていくのは可愛いといいました。お母さんは「……なるほど」といいました。

簡単に言えばこういう話が、又言いますが、12編あります。みんないいお話です。

どれも温かく時にはジンと来ます。

お母さんとさきちゃんの、言葉にしない賢さと優しさがたまりません。

この味はお読みいただければたっぷりと楽しめます。


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「フェイスレス」 沢村鐵 中公文庫

2015-08-12 | 読書


警察小説で、主人公がうら若い女性らしい。すこしこういう世界から離れていたので読んでみた。
初めての作家を知るのも楽しみだし、目撃者が相貌失認という設定も、ストーリー展開が面白そうだ。

新設の大学は単科ではあるが自由な気風で、留学生も受け入れている。だが評判のよくない教授が、爆弾を送りつけられて死んだ。
犯人と接触し、教授の研究室のドアの前にいた留学生担当の教授は、そこで犯人と接触していたが、彼は相貌失認という脳障害があった。

墨田所管内の事件なので強行班係一柳美結巡査が相棒と調べに行く。

留学生からの聴取も目撃者の佐々木教授からも、核心に触れる手がかりが得られなかった。

そして第二の爆破事件がおき、留学生との関係がわかってくる。

非常に華々しい展開で、サイバーテロ、大掛かりな国際テロ組織があるらしい、ボスの”C"という人物からのメッセージが届く。

過去のある留学生の集まりは結束も強く、警察も意志の疎通が得られにくい。そのうち爆死した教授ではなく佐々木が狙われたらしいと思われてくる。

彼を狙った国際的な組織とをもつ”C"と警察の情報解析のプロとの対戦。

面白い要素がスピーディに展開するが、警察の捜査が混迷を極める。

やっと留学生の一人を追い詰めるが、それも”C"に操られていたらしい。


現代的な様々な要素が絡んで早く読めてしまえた。

ただ事件が解決して爆破の犯人も挙がった、しかし国際組織というテロ集団と、時に顔を出す”C”の神がかったモノローグが、多少現実の事件の鮮明さから離れ、続編もあるらしい締めくくりは消化不良が残った。


 

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「食べ物のことはからだに訊け」 岩田健太郎 ちくま新書

2015-08-12 | 読書


健康には程ほどの自信があった。程ほどとはたまに風邪を引くことくらいだった。10年ほど前に山登りを強行して心房細動になり以後数回の病気で、健康について遅まきながら考えるようになった。
家族の食の管理も見直すのがいいかなと、すこし関心が出てきたのでこの本を読んで見た。
題名が日ごろの考えに近いこともあって、同意できることが多かった。

今まで新聞の派手な見出しで「~すれば癌はなおる」「この食べ物で体質が変わった」
臨床データもなく大声で主張するこういう類の本は読まなかった。


この本では第二章に、健康「トンデモ」本というところで述べられている。
「極論が多い」「科学では説明できないこともある」「自然治癒力」「日本古来の」「古代からの」「自然免疫力」
などの「キラキラワード」を多用する。

こういう健康情報満載の本が新聞紹介欄にある。言葉には納得する部分があるが、だがその後に続く効用を信じていいのだろうか。


そうしてこの題名「からだに訊け」が目に付いた。
静かにからだに訊くと、見逃していたわずかな変調に気がつくことがある。予兆を見つかることが出来る。寝る前のすこしの時間、静かに声を聞く。

病気なってから治すのではなく、その前に耳を傾ける。
それは個人差のある自分というたった一つの個体を知ることで、そのうち健康に関心が持て、一概に、こうすれば「癌にならない」「血圧が下がる」「体重が減る」「増える」などと言うことが全てに通じるのかという疑問がわく

いいことは試してみるのがいい、人によって効果があるかもしれない、人はそれぞれ体質も嗜好も違う。健康状態も日々すこしは違っている。


ただ過食はよくない。カロリーの撮りすぎは、消費することを前提に考える。使わない余分なものをため込まない。

このあたりは非常に常識的で、納得できた。




ただ一点、実に信じがたい部分がある。

第一章に上げられる位なので、まず読むべきだろう。


*糖質制限は本当にからだによいのか。

筆者は若く健康体で、昼食は仕事しながらコンビにのおにぎりだと言う。
糖質制限でも、バースデイケーキの一切れで癒されるならいいそうだ。そうかもしれない。
だが。

これは、いかに筆者が臨床医でも、糖尿病患者には無神経ではないだろうか。
糖質制限は、大切であり糖尿病は完治しない、気長な治療も必要だ、しっかりとした指針もいる。食は楽しみであり生きて行く基礎なのだが、思うまま摂取できない体質(病気)を持つことがある。(母が糖尿病だった)

それぞれの専門医の意見をしっかり守ることが一番であるが、実行するのは自分でありいかに先進医療を受けても、健康を取り戻すには前向きに地道な努力がいる。

等質制限(とり過ぎない)事は常に頭にあっていい。病気でなくても、肥満、皮下脂肪、中性脂肪型の油脂の摂取、消費のバランスには注意がいる。

窮屈な生活は楽しくない。ただ知っていて、時にからだの声に耳を傾け、若さで許されることもいつか小さな割れ目から不要な病原がたまり、ほんのすこし年を重ねて代謝が劣ることに気づく、そんな時のために健康に目を向けることも必要だ。
平均余命がのびてきた今、若いからといって油断せず、小さな積み重ねが、心身の健康を守ることだと感じた。高齢者が自立するためのも知識と努力は続けなくてはいけない。

ストレスというような、ちょっとした自覚のない状態でも、心を広げ、遠い山河を思うだけでも、ささやかなで短い人間の人生はわずかに軽くなるのではないだろうか。

健康情報の過度な喧伝から、しっかりとした智恵と知識で生きることを考えさせられた。

 
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