ヴィヴァルディ:調和の幻想
ヴァイオリン協奏曲ト長調 Op.3の3
ヴァイオリン協奏曲イ短調 Op.3の6
ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op.3の
二つのヴァイオリンのための協奏曲イ短調 Op.3の8 ヴァイオリン協奏曲ホ長調 Op.3の12
ヴァイオリン:ヨセフ・スーク
第2ソロ・ヴァイオリン:グナール・ラルサン
指揮:ルドルフ・パウムガルトナー
弦楽合奏:ルツェルン弦楽合奏団
録音:1976年9月16日、19日、スイス、ヴァインフェルト会議堂
発売:1977年9月
LP:日本コロムビア
バロック時代のイタリアの大作曲家ヴィヴァルディの協奏曲集「調和の幻想」Op.3は、1712年に作曲されたが、この作品でヴィヴァルディの名は一躍有名になった。このLPレコードには、全部で12曲からなる「調和の幻想」の中から5曲が、ヨセフ・スークのヴァイオリン、グナール・ラルサンの第2ソロ・ヴァイオリン、それにルドルフ・パウムガルトナー指揮ルツェルン弦楽合奏団の弦楽合奏によって録音されている。全12曲は、独奏ヴァイオリンと弦と通奏低音のチェンバロによる編成(そのうち3曲はチェロを独奏に加える)によっている。このLPレコードのライナーノートで門馬直美氏は、ヴィヴァルディの「調和の幻想」が果たした音楽史上の功績として、次のような点を挙げている。①これ以後ほぼ2世紀にわたり常識となった急ー緩ー急の協奏曲の3楽章制が不動のものとして確立した②独奏を華やかで熱のこもったものとし、特に独奏を引き立てるようにした③それまでにないロマン的な要素を置き、力の対比、エコー的な効果、新鮮な叙情性などを演奏指示で強調した④明快な主題を扱い、その印象を強固なものとした⑤独奏と合奏の有機的な融合が図られている⑥中間の緩徐楽章には、即興的な雰囲気を置き、しかも悲愴味ある情緒を流すことが多い。このLPレコードで独奏ヴァイオリンを演奏しているのが、チェコの名ヴァイオリン奏者ヨゼフ・スーク(1929年―2011年)である。プラハ音楽院卒業後、プラハ四重奏団の第1ヴァイオリン奏者として音楽活動を開始。その後も、チェロのヨゼフ・フッフロ、ピアノのヤン・パネンカと「スーク・トリオ」を結成。一方、ソリストとしても1959年からツアーを行い、世界的名声を得た。ボヘミア・ヴァイオリン楽派の継承者らしく、きちっと整った構成美の中に、ほのかなロマンの香りを漂わせたその演奏内容は、当時日本にも多くのファンを獲得していた。このLPレコードでのヨゼフ・スークの演奏は、自身が持つ演奏の特徴を最大限に発揮させると同時に、バロック時代の曲である「調和の幻想」を、現代の我々の感覚に合わせて、聴かせてくれている。特に、ルドルフ・パウムガルトナー(1917年―2002年)指揮ルツェルン弦楽合奏団との息がぴたりと合い、この世のものとも思われないような、それはそれは美しい弦の響きに、リスナーは暫しの安らぎの時間を過すことができる。(LPC)