セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「サイダーハウス・ルール」

2011-10-17 22:56:02 | 外国映画
 1年位前から、ほんのポツポツと又、映画を観出しています。
 そんな時、「これ、いいから」と薦められて見たのがL・ハルストレム監督の
「マイ・ライフ・アズ・ア・ドック」
 これが中々良かったので、涼しくなった今頃になり、この監督の映画を追
いかけてみました。
 「ギルバート・グレイプ」、「HACHI 約束の犬」、そして「サイダーハウス・ル
ール」

 「故郷」、「自分の居場所」と言えばいいのかもしれないけど、この監督の感
覚に僕が一番ピッタリな言葉は「Homeland」。
 ハルストレム監督の映画にはHomelandが空気のように、いつも纏わり付
いてるようです。
 「マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ」は主人公が新しいHomelandを見つける話。
 「ギルバート・グレイプ」は、自分の新しい人生を生きる為にHomelandを
出て行く話。
 そして「サイダーハウス・ルール」は、束縛された故郷を出て、大人になり・・・。

 「サイダーハウス・ルール」(1999年・米)監督ラッセ・ハルストレム 出演ト
   ビー・マグワイヤー、シャーリーズ・セロン、マイケル・ケイン

 1943年アメリカ、セント・クラウズにある孤児院兼産科医院では、成長した
孤児ホーマー(T・マグワイヤー )が院長先生(M・ケイン)の助手をしながら
生活していた。
 自分の主義と違い「堕胎」を行う院長先生の元を離れ、まだ見ぬ外の世界
を知りたくなる。
 そんな時、若いカップルが「堕胎」をしに孤児院へやって来た、数日後、ホ
ーマーは退院する二人にくっ付いて孤児院を出て行く、落ち着き先は男の親
が経営してる果樹園。
 果樹園の住み込み小屋(サイダーハウス)に暮らしながら、毎日を新しい冒
険のように感じるホーマー、そして、少しずつ外の、理想と違う現実の世界を
知り成長していく・・・。

 この監督、人が生活していく上で起こりそうな小さな起伏や少し大きな起伏
を上手く繋ぎ合わせてドラマにし、それを淡々と優しく描いていくので好きなん
です。
 何か小津チックとでもいう感じ。
 派手な事、吃驚させるような事は全然ないのに、観てる者を惹きつけて離
さない強さがあります、きっと編集がとても上手いのでしょう、それに、いずれ
の作品も役者さん達の演技が自然で素晴らしい(「HACHI~」は除く)、特に
子供達を描かせたら天下一品ですね。
 この映画の子供達も、ただそこに居るんじゃなくて、みんな、そこで生きて生
活してるリアルさがありました。
 そして、ちょっとワンパターン気味ではあるけど音楽の使い方が上手い(これ
も「HACHI~」を除きます)、この作品では珍しく「対位法」も使っていますね。
 昔々、20代の頃、小津作品が苦手で完全な黒澤派だったんですけど、こう
いうテンポの映画がしっくりくるんだから、そろそろ小津さんの作品を見直して
みようかな、そんな気にさせられました。
 今のところ、ハルストレム監督の4作品の中では、この作品が最高に良くて、
ここ1年の間に新しく観た映画の中でも、これが№1だと思っています。


・全然異質ではあるけど、話の流れは「ローマの休日」に少し似ていなくもない。
 もっとも、こちらは王女様ではないので素敵なアドベンチュラルという訳には
 いかず、一歩外へ出れば「喰っていかなきゃ」ならないんですけどね。(笑)
・役者達ではM・ケインがいいですね、若い頃のケインって、むき出しの才能と
 いう感じで、僕は何か馴染めなかったのですが、枯れた歳になって、いい味
 を出すようになった気がします。



コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「シャレード」 | トップ | 「ダウンタウン物語」 »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
印象に残ってます (宵乃)
2012-05-29 11:29:20
ずいぶんまえに一度だけ観てるんですが、忘れっぽい自分がどうして?と不思議になるくらい、色々なシーンを覚えてます。

>派手な事、吃驚させるような事は全然ないのに、観てる者を惹きつけて離さない強さがあります

本当にその通りですよね。丁寧に描写を積み重ねて、なおかつ無駄がないので、本当にその場所の空気が伝わってくるようです。

>「HACHI~」を除きます

2回も(笑)
わたしは初見が吹替え版でがっかりしたので、いつかちゃんとしたのを再見する予定です。再見予定の録画がたまって、なかなか観られないけど!
「ギルバート・グレイプ」は好きな作品だし、「マイ・ライフ~」も昔観た作品で、これらが同じ監督の作品だとは気付きませんでした。「サイダーハウス~」は虐待が苦手なので観ませんが、「マイ・ライフ~」はそのうち再見したいですね~。

あと、ミニ時代劇セットはもう無いんですね…残念です!!
返信する
リンゴジュースが飲みたくなります(笑) (鉦鼓亭)
2012-05-29 23:25:26
この作品も「ギルバート・グレイプ」、「マイ・ライフ・アズ・ア・ドック」も、ストーリーは淡々と進んでいくんですよね、それなのに惹きつけられるのが不思議です。
仰るとおり、「その場所の空気」や匂いまで感じられますね。
ただ、小津さんの映画に「娘の結婚」が絡むように、この人の作品には「親の死」が絡むことが多いですね。
(本作では、サイドストーリー的な「虐待する親の死」ですが)
パターンを使って自分の世界を表現する監督なのかもしれません。

いずれ、この監督の初期の傑作と言われている「やかまし村の子供たち」を見ようと思っています。

「HACHI~」
僕も最後の方はタオル持ちながら見ましたよ。(笑)
でも、泣ける映画と出来の良い映画は違いますから。
もう、この映画は根本的に脚本が酷い。
監督も何とかしようと頑張ってるみたいだけど、酷い脚本に引き摺られて無理心中しちゃってます。
いつもの冴えが、まるで無い。
そもそも、生きてる人間が教授以外に居ない(その他は皆、案山子)、仕方ないのか音楽で煽ってばかり。
描かなきゃいけない所を描かず、描かなくていい所をセッセと描いてる。
例えば、教授が教室で倒れるシーンなんて全然必要ない、省略出来ます、etc、etc・・・。

すいません、ちょっと逆上してしまいました。
お許しください。

ミニ時代劇のセット>使ってませんでしたからね・・・、国際放映も近代的なビルになっちゃったし。
返信する

コメントを投稿

外国映画」カテゴリの最新記事