「砂の器」(1974年・日)
監督 野村芳太郎
原作 松本清張
脚本 橋本忍 山田洋次
撮影 川又
音楽 芥川也寸志
作曲 菅野光亮
美術 森田郷平
出演 丹波哲郎
加藤剛
森田健作
加藤嘉 緒形拳
島田陽子 山口果林
佐分利信 笠智衆
H26.7.13、TOHOシネマズ日本橋に於いて再見。
(VHS、DVDでは何度も観ています)
この作品、幾度も書こうと思ったのですが自分の中で評価が定まらず、中々、
書く事が出来ませんでした。
再見を機にチャレンジしてみます。
今回も「泣き」に日本橋まで出掛けたくらい大好きな作品、それは間違いな
いのですが、では、この作品が世評ほどの名作か?となると、「まんまと「宿命」
のシーンで一杯喰わされてるんじゃないのか?」と、どうしても疑念が払拭出来
ないというか、すぐ「迷い」が出てしまうのです。
でも、そこに拘ると、また書けなくなりますから(笑)、ちょっと、その部分はパ
スさせてもらいます。
「えぇ、本年6月23日に発生しました国鉄蒲田操車場構内殺人事件の重要
容疑者と致しまして本籍~」
警視庁合同捜査会議で丹波哲郎演じる今西警部補が立ち上がった瞬間~
競輪狂の橋本忍が「捲り一発」を狙って書いたと自著「複眼の映像」に記して
いるように、競輪のラスト1周を告げる「ジャン」が鳴り響く瞬間~実質的な意
味でこの映画は始まります。
只、このシーンまでの90分以上に渡る長~い助走も、地道な捜査ばかりの
一本調子にならないよう時間軸を前後させたり、犯人周辺の描写を「ダレ場」
として使ったり工夫しています。特に犯人を特定する切っ掛けとなった写真発
見を時間軸を変えて合同捜査会議に見せたのは上手いのではないでしょうか。
(推理モノとしてはルール違反ですが、この作品は「推理モノのスタイルを使
った世話物」なので問題ないと思っています)
そしてピアノ協奏曲「宿命」(テーマ曲であり映画のテーマでもある)をバック
に遍路、演奏会、捜査会議、奇跡の四重奏が始まり見る者を圧倒していく・・・。
この30分近いシーンはカメラマン川又の素晴らしい仕事と相俟って名シー
ンの洪水なのですが、その中でも特筆すべき4点書き抜いてみます。
・前述した「本年6月23日に~」から「彼にはもう音楽・・・音楽の中でしか父親
と会えないんだ」まで続く丹波哲郎の見事な名調子。
・作品一番の白眉、加藤嘉の、
「知らん、知らん、そ、そんな人知らねぇ!!」の慟哭!!
・演奏する加藤剛の右横にオーバーラップして出てくる緒形拳の、
「秀夫、何故だ!どげんしてなんだ?~」から始まる一連の台詞。
・ラスト、演奏後の喝采の中、己の思い全てを出し切った虚脱、そこからの目覚
めと俗世の眩いばかりの栄光、その瞬間に訪れる諦観。
この作品における加藤剛の演技は「影の車」に較べ、幅が無く硬質で「大根」
と言ってもいい程なのですが、この時の演技は、それまでの凡庸を補うだけの
名演技だったと思います。
勿論、芥川也寸志監修の元、菅野光亮が作曲した「宿命」の素晴らしさは言
うまでもない事なのですが、音楽と映像に負けない演技を役者陣がしてるから、
あの感動があることも忘れてはならないと思います。
再見する3日前、弟と「この映画、誰が主役なんだろう?」と話しました。
(トップ・クレジットで出ずっ張りなのは丹波哲郎ですが、僕は加藤剛が本当
の主役だと思ってます)
その時、二人で迷いなく一致したのは、
「誰が主役でも、一番印象に残るのは加藤嘉!」
極論すれば、僕にとってこの作品は、加藤嘉のあのシーンを見る為に有ると
言ってもいいくらい。
後世に残る素晴らしい演技でした。
以下、演技について(素人が印で評価するのは無礼極まりないのですが)。
☆ 加藤嘉
◎ 丹波哲郎、緒形拳
○ 浜村純(村の巡査~しっかりサイレント演技してる)、加藤剛(最後だけだ
から)、佐分利信、笠智衆(この二人、いつも通りだけど作品に重みを付け
てる)、丹古母鬼馬二(上手いかどうかは微妙ですが、一生懸命考えて演
技してます(隣の刑事と比べてみて))、山口果林(誰が見てもイヤな女、
と言う事は正解の演技)。
× 渥美清
好きだし名優と思ってるけど、この頃既に寅さんの色が付きすぎてて・・・。
松竹オールスター要素の有る作品だから致し方ないのは解ってますが、
やっぱり作品のトーンの中で浮いてると言うか、観客に邪念を起こさせる
時点でダメだと思います。
(出るなら、あの役か三木謙一だろうけど、三木はやはり緒形拳の方が自
然に無理なく見れる)
あの役は通天閣飲食組合長を演じた殿山泰司の方がピッタリで、組合長
は曾我廼家明蝶が良いと個人的に思ってます。
どうも定まらない思いを反映して散漫になりましたが、映画好きなら一度は観
ておくべき作品だと思います。
(定まらない為か、明日も続きます(汗))
※急行「鳥海」の食堂車シーン。
何と二人はビールだけ頼んで食事は持ち込みの駅弁、おまけに「お茶ちょうだい」。
いいのか、それ。(笑)
その頃の食堂車知ってるけど、そんなの見た事ない。(子供でしたが)
※弟と話した時、回想シーンの始め、千代吉親子が生まれ故郷に別れを告げる所。
「あの電柱、何とかならんかったのかね、しかもコンクリ製だろ、あれ。リマスターす
る時、消してもいいんじゃない」なんて言い合ってたのですが、
回想の途中、千代吉を乗せた運搬車の車輪がゴムタイヤなのも発見してしまった。
(笑)
※秀夫役の子、恨みを込めた目と表情はいいのですが、どうも身体つきがね、「しっ
かり三食食べてます」なので昔から違和感が取れません。
※振り返れば、本作から「事件」辺りまでが松竹最後の輝きだった気がします。
(制作に長い時間を掛ける大作ブームの先駆けでもありましたね)
監督 野村芳太郎
原作 松本清張
脚本 橋本忍 山田洋次
撮影 川又
音楽 芥川也寸志
作曲 菅野光亮
美術 森田郷平
出演 丹波哲郎
加藤剛
森田健作
加藤嘉 緒形拳
島田陽子 山口果林
佐分利信 笠智衆
H26.7.13、TOHOシネマズ日本橋に於いて再見。
(VHS、DVDでは何度も観ています)
この作品、幾度も書こうと思ったのですが自分の中で評価が定まらず、中々、
書く事が出来ませんでした。
再見を機にチャレンジしてみます。
今回も「泣き」に日本橋まで出掛けたくらい大好きな作品、それは間違いな
いのですが、では、この作品が世評ほどの名作か?となると、「まんまと「宿命」
のシーンで一杯喰わされてるんじゃないのか?」と、どうしても疑念が払拭出来
ないというか、すぐ「迷い」が出てしまうのです。
でも、そこに拘ると、また書けなくなりますから(笑)、ちょっと、その部分はパ
スさせてもらいます。
「えぇ、本年6月23日に発生しました国鉄蒲田操車場構内殺人事件の重要
容疑者と致しまして本籍~」
警視庁合同捜査会議で丹波哲郎演じる今西警部補が立ち上がった瞬間~
競輪狂の橋本忍が「捲り一発」を狙って書いたと自著「複眼の映像」に記して
いるように、競輪のラスト1周を告げる「ジャン」が鳴り響く瞬間~実質的な意
味でこの映画は始まります。
只、このシーンまでの90分以上に渡る長~い助走も、地道な捜査ばかりの
一本調子にならないよう時間軸を前後させたり、犯人周辺の描写を「ダレ場」
として使ったり工夫しています。特に犯人を特定する切っ掛けとなった写真発
見を時間軸を変えて合同捜査会議に見せたのは上手いのではないでしょうか。
(推理モノとしてはルール違反ですが、この作品は「推理モノのスタイルを使
った世話物」なので問題ないと思っています)
そしてピアノ協奏曲「宿命」(テーマ曲であり映画のテーマでもある)をバック
に遍路、演奏会、捜査会議、奇跡の四重奏が始まり見る者を圧倒していく・・・。
この30分近いシーンはカメラマン川又の素晴らしい仕事と相俟って名シー
ンの洪水なのですが、その中でも特筆すべき4点書き抜いてみます。
・前述した「本年6月23日に~」から「彼にはもう音楽・・・音楽の中でしか父親
と会えないんだ」まで続く丹波哲郎の見事な名調子。
・作品一番の白眉、加藤嘉の、
「知らん、知らん、そ、そんな人知らねぇ!!」の慟哭!!
・演奏する加藤剛の右横にオーバーラップして出てくる緒形拳の、
「秀夫、何故だ!どげんしてなんだ?~」から始まる一連の台詞。
・ラスト、演奏後の喝采の中、己の思い全てを出し切った虚脱、そこからの目覚
めと俗世の眩いばかりの栄光、その瞬間に訪れる諦観。
この作品における加藤剛の演技は「影の車」に較べ、幅が無く硬質で「大根」
と言ってもいい程なのですが、この時の演技は、それまでの凡庸を補うだけの
名演技だったと思います。
勿論、芥川也寸志監修の元、菅野光亮が作曲した「宿命」の素晴らしさは言
うまでもない事なのですが、音楽と映像に負けない演技を役者陣がしてるから、
あの感動があることも忘れてはならないと思います。
再見する3日前、弟と「この映画、誰が主役なんだろう?」と話しました。
(トップ・クレジットで出ずっ張りなのは丹波哲郎ですが、僕は加藤剛が本当
の主役だと思ってます)
その時、二人で迷いなく一致したのは、
「誰が主役でも、一番印象に残るのは加藤嘉!」
極論すれば、僕にとってこの作品は、加藤嘉のあのシーンを見る為に有ると
言ってもいいくらい。
後世に残る素晴らしい演技でした。
以下、演技について(素人が印で評価するのは無礼極まりないのですが)。
☆ 加藤嘉
◎ 丹波哲郎、緒形拳
○ 浜村純(村の巡査~しっかりサイレント演技してる)、加藤剛(最後だけだ
から)、佐分利信、笠智衆(この二人、いつも通りだけど作品に重みを付け
てる)、丹古母鬼馬二(上手いかどうかは微妙ですが、一生懸命考えて演
技してます(隣の刑事と比べてみて))、山口果林(誰が見てもイヤな女、
と言う事は正解の演技)。
× 渥美清
好きだし名優と思ってるけど、この頃既に寅さんの色が付きすぎてて・・・。
松竹オールスター要素の有る作品だから致し方ないのは解ってますが、
やっぱり作品のトーンの中で浮いてると言うか、観客に邪念を起こさせる
時点でダメだと思います。
(出るなら、あの役か三木謙一だろうけど、三木はやはり緒形拳の方が自
然に無理なく見れる)
あの役は通天閣飲食組合長を演じた殿山泰司の方がピッタリで、組合長
は曾我廼家明蝶が良いと個人的に思ってます。
どうも定まらない思いを反映して散漫になりましたが、映画好きなら一度は観
ておくべき作品だと思います。
(定まらない為か、明日も続きます(汗))
※急行「鳥海」の食堂車シーン。
何と二人はビールだけ頼んで食事は持ち込みの駅弁、おまけに「お茶ちょうだい」。
いいのか、それ。(笑)
その頃の食堂車知ってるけど、そんなの見た事ない。(子供でしたが)
※弟と話した時、回想シーンの始め、千代吉親子が生まれ故郷に別れを告げる所。
「あの電柱、何とかならんかったのかね、しかもコンクリ製だろ、あれ。リマスターす
る時、消してもいいんじゃない」なんて言い合ってたのですが、
回想の途中、千代吉を乗せた運搬車の車輪がゴムタイヤなのも発見してしまった。
(笑)
※秀夫役の子、恨みを込めた目と表情はいいのですが、どうも身体つきがね、「しっ
かり三食食べてます」なので昔から違和感が取れません。
※振り返れば、本作から「事件」辺りまでが松竹最後の輝きだった気がします。
(制作に長い時間を掛ける大作ブームの先駆けでもありましたね)
>作品一番の白眉、加藤嘉の、
>「知らん、知らん、そ、そんな人知らねぇ!!」の慟哭!!
うおぉ・・・
朝から涙目です。
どうしましょう?(笑)
父の愛・子の気持ち。
同じ野村芳太郎監督の『鬼畜』を観るとこれが見事に
反転していることに気がつきました。
コメントありがとうございます!
朝から涙目>
僕は映画館で、しっかり泣いてきましたよ。(笑)
今回、問屋の営業さんを誘って行ったのですが、
(長い事、一人で映画を観てきたから、隣、前後に知り合いが居ると気が散ってダメなんです、その人は真ん中で観るタイプで僕は前の方で観るタイプだから別々の席)
その人の隣の女性が「宿命」の始まった途端、号泣。
どうも、自分の泣くタイミングを逸してしまったようです。(笑)
感動しましたって言ってましたけど。
父の愛・子の気持ち>
そうですね、この映画は、それをどれだけ感じ取れるかだと思います。
「鬼畜」>評判は聞いていましたが「いやな気分になる」との評判でイマイチ気が乗らず、いまだ未見のままなんです。(汗)
反転>そういう事か・・・。ちょっと気分待ちかもしれません。
『ファイアボール』>ご紹介頂いて、ありがとうございます。
今、決算仕事に忙殺されてまして、中々、夜、時間が取れません・・・。
このペースだと来月3日辺りに終わると思うので、何とかお盆前までには観て感想を送る積りでいます。
決算前のお忙しい時に、申し訳ありません。
>「鬼畜」>評判は聞いていましたが「いやな気分になる」との評判でイマイチ気が乗らず、いまだ未見のままなんです。(汗)
確かに・・・
自分も書いておいてあれなんですがあの作品を
観返す気にはなれないんですよね・・・
子供の時、断念したのを
プログ・DE・ロードショー 夏の納涼企画で観返して
大人になってみても怖い作品だと再認識しました。
(自分が子供の親になって、より怖いというか不快というか、何とも言い難い感情がこみあげてくるんですよね・・・)
>『ファイアボール』の方も
気が向いたらで結構ですので・・・
無理はされないでください。
それでは!!
決算>ちょっと今年はチンタラしすぎまして・・・。(笑)
今になって青くなってます。
とか言いながら、映画観に行ってますから、知れたモノです。(汗)
『ファイアボール』>なるべく早く見るつもりですが、もしかしたら、
予定より若干遅くなるかもしれません。
無理はしませんのでご安心下さい。