セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「アルプススタンドのはしの方」

2023-03-04 20:45:54 | 邦画
 「アルプススタンドのはしの方」(2020年、日本)
   監督 城定秀夫
   脚本 奥村徹也
   原作 籔博晶・兵庫県立東播磨高等学校演劇部
   撮影 村橋佳伸
   主題歌 the peggies『青すぎる空』(エピックレコードジャパン)
   出演 小野莉奈
      平井亜門
      西本まりん
      中村守里
      黒木ひかり  目次立樹

 部員4人の高校演劇部の顧問、籔博晶氏が4人で出来る劇「アルプススタンドのはしの方」を作ったら、演劇の地区大会を勝ち抜き全国高校演劇大会で最優秀賞を獲得、更に商業演劇化され映画となった。
 映画なので舞台では台詞の中にだけ出てくる吹奏楽部部長も実際に登場、商業演劇化された時の新キャスト茶道部の先生、更にエキストラとして多くの観客や吹奏楽部部員も登場するが、基本、4人が応援席の端っこでブツブツ言ってる青空の下の密室会話劇、面白いのは夏の甲子園大会が舞台なのにグランドも選手も一切映さない「枷」を作ってる事(音だけは聞こえる)、画面はスタンドの2ヶ所と球場内の通路だけで作られています。

 夏の甲子園大会1回戦、埼玉代表の県立東入間高校は強豪校と対戦中、アルプススタンドの応援席では応援の集団から離れるように演劇部員の友人二人、安田と田宮、そこへ余り話したこともない元野球部員の男子 藤野、更に少し離れた所に人付合いの出来ない勉強一筋のメガネ女子 宮下が吹き溜まりに吹き寄せられるように集まっていた、試合が進むにつれそれぞれの挫折が明らかになっていく・・・。

   予告編 https://www.youtube.com/watch?v=n1L7ud99OXQ

 いやぁ、青春してますねぇ、悩み、挫折、屈折しながらも前を向く、テーマは「しょうがない」という諦め、自己抑制の破壊。
 「ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)」(1995年)が恋愛の会話劇なら、こちらは青春の会話劇、最初、ぎこちない間の会話劇だったのが(変な間だけど、決して悪い間ではない)、次第に噛み合い出し試合という触媒を使って一つに纏まっていく様は何だかとても青春を感じてしまいました。
 最優秀賞を獲っただけある脚本で最初のバラバラ感から一つになっていく過程が上手く描かれてる、只、転から結への転換点、田宮の覚醒にやや唐突感を感じてしまったけど、全体を見渡せば十分に許容範囲でしょう。

 久々に後味爽やかな青春群像劇を観た気がします。

  かち割りを 頭に乗せて 甲子園
   今年の夏も まだまだ盛り

※タイトルにアルプススタンドと有りますが撮影に甲子園球場は使わせてもらえなかったとか、でも、本当のアルプススタンドで撮影したらエキストラの数を増やさないとスカスカになりそう、予算的にはこれで良かったかも。お陰で埼玉県予選と勘違いしたのは秘密。(笑)
※高校演劇大会の制限時間が60分の為、それをベースにした本作も75分という短い作品になっている。

 R5.3.4
 DVD
 

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