セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

蟹江敬三さんを悼む 「天使のはらわた 赤い教室」

2014-04-05 22:25:26 | 邦画
 先月末、蟹江敬三さんがお亡くなりになりました。
 謹んでお悔やみ申し上げます。

 「鬼平犯科帳」の小房の粂八役は良かったなぁ、また好きな俳優さんが一人居なくなってしまった。
 お茶の間で名前を知られるようになったのは、1980年水谷豊の最初の大ブレイク作「熱中時代」
第2シリーズでの生真面目過ぎる巡査役で、概ね水谷さんにオチョクられるコメディ・リリーフの役ど
ころ。
 この作品で名を知られるまで何をしていたか。
 あのご面相ですから、推して知るべしで現代劇、時代劇問わずヤクザ、悪役の殺され役斬られ役。
 そして日活ロマンポルノでは精神が屈折した「レイプ魔」、レイプものの、ちょっとした常連でした。
 そんな蟹江さんを初めてハッキリと認識したのは、1979年1月に公開された、この作品。
 (観たのは同年7月、地元の3番館ですよ~笑)

  「天使のはらわた 赤い教室」(日活)
    監督 曽根中生
    脚本 石井隆 曽根中生
    出演 水原ゆう紀 蟹江敬三

    教育実習生・土屋名美(水原ゆう紀)は、或る放課後、空き教室で数人の男にレイプされてしまう。
    しかも襲った集団は、それを8mmカメラで撮影しブルーフィルム(現代の裏AV~音声なんて無いサイレント)
    として闇ルートで販売していた。
    エロ雑誌の編集・販売をしている村木(蟹江敬三)は、温泉宿の暇潰しで見たブルーフィルムに写る名美の
    レイプシーン、そのリアルさと彼女の容貌に強い印象を受ける。

 (ネタバレです)
 石井隆の劇画(だったかな)の映画化で、通称「名美シリーズ」の第2作目、ロマンポルノの傑作の一つに
数えられてる作品です。
 観に行ったのは、「傑作」なんて触れ込みに誘われてじゃなく、純然とした劣情の為、水原ゆう紀が見たくて行
った訳ですが、これが意に反して中々の秀作でビックリ。
 (当時、やはりロマンポルノの傑作と言われてた「赫い髪の女」(神代辰巳監督)は、悪くは無いけど傑作とは全然思えなかった)
 何が良かったって、村木を演じた蟹江敬三が素晴らしく良かったんですよ。
 (目当ての水原ゆう紀は恐ろしいくらい下手っぴいだったけど)
 村木はブルーフィルムに写った名美に一目惚れしてしまったんですね。
 夜の女に堕ちぶれた名美を何とか自分が救ってやりたい。
 一度は名美も村木を信じるのですが、村木の不始末から裏切られてしまう。
 そんな二人が、更に堕ちていって再び巡り会う。
 「俺と一緒に逃げよう、生活するくらいの金なら何とかする、な、こんな生活から足抜いて、少しくらい
貧乏でもマトモな生活をしたほうがいいじゃないか、俺と来てくれよ」
 「あんた、私に同情して助けてくれるんだ、いい気分でしょ。でもさ、本当に私を愛してるなら、私と一緒に
堕ちてよ、それならいいわよ、あなたと一緒にいてあげる。ねぇ、こっちに来てよ」
 名美に、そう誘われた時の村木の表情。
 救世主気取りの上から目線に漸く気付いた村木、名美の世界の奈落を初めてリアルに感じた瞬間。
 この時の表情が絶品というくらいに素晴らしかった。
 そこまで暗めのポルノ映画と思ってたのが、この瞬間、僕の中で忘れられない作品になりました。

 この1年後、蟹江さんは「熱中時代2」でブレイクすることに。
 その起用には「天使のはらわた 赤い教室」の演技が少なからず貢献したんじゃないか、と僕は思っています。 

※35年前に一度観ただけの作品ですから、二人の台詞は殆ど出鱈目です。
 でも、意味は違ってないと思っています。
※「熱中時代」は蟹江さんの出た「2」より、志穂美悦子の出てた第1作の方が断然良かった。
 この時の志穂美さんは良かった、「女必殺拳」のアクション人気俳優から普通の人気女優になった作品でした。
 以来、志穂美さんのファンになったっけ。(笑)

     
   

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