セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「湯を沸かすほどの熱い愛」

2018-08-16 22:48:22 | 邦画
 「湯を沸かすほどの熱い愛」(2016年、日本)
   監督 中野量太
   脚本 中野量太
   撮影 池内義浩
   音楽 渡邊崇
   主題歌 きのこ帝国
   出演 宮沢りえ
       杉咲花
       オダギリジョー
       伊東蒼
       松坂桃李   篠原ゆき子

 幸野双葉は一人娘 安澄と共に二人暮らし、夫 一浩は1年前に蒸発、営業していた銭湯を閉め、今はパン屋でバイトして生計を立てている。
 安澄は学校で苛めを受けていたが、双葉はもっと強く生きるよう諭す、そんな双葉の身体に異変が・・・。

  予告編 https://www.youtube.com/watch?v=PRx-P0iC4UE

 「ジェーン・ドゥの解剖」が怖がらさせる事に特化した作品なら、本作は泣かせる事に特化した作品。
 明治から戦後10年位までは小説等で結構有ったし、病気による死別で泣かせるのは吉永小百合(島かおり)の「愛と死をみつめて」、百恵・友和「赤い疑惑」以来の定番。(「赤い疑惑」の元は「ある愛の詩」でしょうけど)
 愛する人の死とそれを前提にして様々な仕掛けを用い「泣かせ」に掛かる、余り僕の好きでないジャンル。身近な人が亡くなって涙するのは当たり前。

 只、この作品、死を前にした母親が個々の自立を促し、それによって自分を含めた新しい家族を創り上げていく、その過程に重点を置き、家族とは血なのか絆なのか、本当の家族とは何かを問うています。
 そのテーマは良いし、悔しいけど多種多様な仕掛けが素直に上手いと思う。死期間近というタイムリミットでドラマを圧縮し、普通ならあざと過ぎると感じさせる仕掛けを余り意識させない、その演出は長編初挑戦を感じさせない力量が有りました。
 これを死別使わず別の材料で作ってくれたら・・・。

 この、かなり強引な涙話にリアリティを持たせ実際に多くのハンカチを湿らせたのは、演出もさることながら、宮沢りえ(母)、杉咲花(長女)、伊東蒼(次女)の女優三人、力演に傾く所をダメ人間ぶりで中和させたオダギリジョー(父)の役者たち。
 特に各映画賞を掴み取りした、宮沢りえと杉咲花の演技は圧巻と言っていいくらい素晴らしかったです(伊東蒼ちゃんも良かったよ)、剛柔取り混ぜ自然体とバイタリティ、母親の強さを感じさせた宮沢りえ、心の成長を絶妙に演じた杉咲花。
 この作品、主要出演者には全て見せ場が用意されていて役者さんにも演じ甲斐が有ったんじゃないでしょうか、りりぃさんなんてほんの10秒位しか出番ないのに「本当に憎たらしく」感じてしまう演技で、このシーンは演出も素晴らしかったと思います。

 死別でも何でも、兎に角、泣きたい方にはお薦めします。(泣くとストレス軽減になると言うし)

※賛否両論あるラストシーン、僕は心の無い形式より気持ちのこもった形があれば、それは自由だと思うけど、ちょっと三毛別羆事件(グロいので検索注意)の熊汁を思い出してしまった。(汗)
※オダジョー、営業日は兎も角、定休日くらい女房の傍に居ろや!ムカっとしたぜ。
※手話の件で涙腺崩壊。

 H30,8.15
 DVD

 

最新の画像もっと見る

コメントを投稿